しゅんまつもと

ROMA/ローマのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.9
Netflixで配信が開始されてからもなぜか重い腰が上がらず、はてどうしたものかと考えた末に、ずっと行きたかったアップリンク吉祥寺で初鑑賞。あまりの凄まじさと情報量に咀嚼しきれず、その後Netflixで2回見終わってようやく書こうという気持ちになった。

いやいや、こんな映画が配信でいつでも観れるなんてすごいよねほんと。
でも劇場で大きなスクリーンと大きな音で観れる機会があれば絶対に行くべき。段違いです。

この映画を何も起こらない映画だと捉える人もいるのかもしれない。確かに平坦かもしれない。でも、自分にとってはアベンジャーズと同じくらい、もしくはそれ以上にハラハラして見逃せない瞬間の連続だった。いや、比べる対象がおかしいですよね。
でも本当にそれくらい。この映画を美しいショットだけの映画だけで終わらせたくない。美しいショットは同時にそれと同じくらいに雄弁だ。

映画が始まった最初のシーン。細かく区切られた床のタイル、ブラシの音、流れる水、水に反射する空を横切る飛行機。もうこれだけで何か語れてしまう。
水は映画全体を貫いて「生」と死」を象徴する。その裏返しのように火がともされる山火事のシーンもとても印象深い。装飾された庭の向こうから徐々に煙が上がっていくシーンのあの不気味さと美しさはなんだ。燃えさかり、倒れる木前で歌う男を捉えるロングショットはなんだ。

そしてラストの海のシーン。
日常から不意に訪れる死。かつて救えなかった(殺してしまった)生命を必死に掴むように、クレオは海を進む。「死」がどうしようもなくそこにあるのなら、反対に生まれるものもある。死の傍らの浜辺で生まれたものは果たして。


他にも、芸術的車庫入れ&無理やり三車線、フェルミンのシャワールームカーテンを使った棒術、道場を訪れる謎の先生の教え、犬の剥製、走ってくる羊の列、巨大ガニの置物などなど、名(迷)シーンが連発。一瞬も見逃せない。