どらどら

ラストレターのどらどらのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.8
- 君にまだずっと恋してるって言ったら信じますか?

手紙
卒業生代表から卒業生へ
僕からもう会えない君へ
母から子へ
わたしから、あなたへ

何年後も思いを風化させずに保つ
手紙にはきっと、そんな力がある
それは送り手だけでなく、受け手にとっても

一生残る、手紙
過去も未来も現在も、明るく照らし続ける
たとえ今がどれほど暗くても
その中ではあの頃が、生きている

きっと一方通行の恋でも
それは相手にとっても大切なものになるんだ
もう届かない手紙を、僕は書く

—————————————————————
もちろんこんな経験はないけど、
それでもたしかに僕の中にもある思いが蘇る、そんな映画だ
俳優陣の静謐な演技と抑制された演出が際立つ

前半の軽快なやりとり、演出の数々
恋って、生きるって、おかしみがあって甘酸っぱくて

中盤、明かされる真実、訪れる不穏
その全てを引き受けるトヨエツ
“お前はあいつの人生に何一つ影響を与えていない”
恋って、生きるって、苦しい

後半、手紙がときほぐす想い
大丈夫。それでもきっと生きていける。
あの頃の想いを手紙に込めて

—————————————————————
広瀬すずがやはり圧巻だ
一人二役をものすごく繊細に演じ分けている
なにより、大人になった未咲は全く示されないのに、対極なはずの高校生の時の広瀬すずから、それが容易に想像できてしまう、繋がってしまう。
憂いのある表情の全てから、彼女の感情が流れ込んでくる
この映画の説得力を一手に担っている

森七菜の瑞々しさが作品に吹き込む風も素晴らしい
この世代は広瀬すずの独走だと思っていたが、森七菜、清原果耶、蒔田彩珠とそれぞれ独自の存在感の女優が出てきた。なんだかワクワクする。

声を荒げなくても心を揺さぶることはできる
そんな当たり前のことをしっかり思い出させてくれる静謐で力強い演技だった

手紙を巡る、とても温かくて切なくて美しい傑作だ
このSNS全盛時代にこれを撮ったということに、意味があるんだと思う
どらどら

どらどら