かたゆき

ラストレターのかたゆきのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
4.5
君にまだずっと恋してると言ったら君は信じますか――。
精神疾患を患い長年闘病生活を続けてきた姉を自殺で失った、裕里。
娘とともに実家での葬儀に参列した彼女は、姉の荷物の中から同窓会の招待状を見つけるのだった。
かつてのクラスメートに事実を知らせるため、同窓会の会場へと向かった裕里だったが、暖かく迎え入れてくれた姉の同級生たちにとても言い出すことが出来ず、彼女はそのまま姉の未咲としてスピーチまでしてしまう。
そして裕里はそこで、姉の初恋の相手である売れない小説家、乙坂と出会うのだった――。
互いの近況を知らせるために、何気なく始まった乙坂との文通。
裕里は姉の未咲として彼へと手紙を書き、ちょっとした手違いから、乙坂は未咲の一人娘である鮎美へと返事を書くことに。
そうして始まった三人の一方通行のやり取りはやがて、彼女たちの隠された青春の日々を蘇らせるのだった……。

日本が世界に誇る天才映像作家・岩井俊二監督の最新作は、そんな詩情豊かな映像と繊細な心理描写が光る恋愛ドラマの傑作でありました。
いやー、この人の才能っていつまで経っても色褪せないばかりか、歳を経てますます芳醇になってゆきますね。
抒情性溢れる映像と音楽、最初から最後まできちんと分かりやすく構築された脚本、そして役者陣のキラキラと輝くような繊細な演技…、どれを取っても素晴らしいとしか言いようがありません。
制服姿の女子高生を美しく撮ることにかけては、この人、もはや世界一なんじゃないですかね。
小雨がそぼ降るなか、森の中で広瀬すずと森七菜が傘を差して二人で佇む映像は涙が出るほど美しかったです。

そして、自殺した姉と偽って手紙を書く妹、初恋の相手と思って過去を振り返る男、自殺した母親の過去を知るために手紙を受け取る娘、この三人の思惑が複雑に絡み合う文通も、お互いの気持ちが痛いほど分かりなんとも切ない。
あと、豊川悦治と中山美穂をこんな形で使うなんて、なんという心憎い演出!名作『ラブレター』のファンとしては思わずニンマリしちゃいますね。
最後、未咲が娘に遺した〝ラストレター〟の内容なんて、あまりにも切なすぎて涙無くしては見れませんでした。
多少ストーリー展開に強引なところもありますが、期待に違わぬ素晴らしい出来。
岩井俊二監督、これからもたくさんの傑作を世に送り出してもらいたい。
かたゆき

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