こたつムービー

ラストレターのこたつムービーのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
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岩井俊二監督なので「逆に」
手厳しく書こうと思う(手厳しくともファンはいっぱいいると思うので)


近年では最高の出来だったように思う。
けれど、90年代の熱狂が懐かしい、と素直に思う。もっとも、これを見たティーンは熱狂するだろうが。

つくづく篠田昇(撮影)とREMEDIOS(音楽)の喪失はデカすぎる。
撮影は神がかってこず(ドローン以外)、申し訳ないが小林武史の劇伴はREMEDIOSの楽曲群に及んでない。音が多いんだよ。

岩井俊二の映画はプロダクションとしての「段取り臭」から抜け出ようともがき続ける所に迫力と魅力があると思うが、今回はどうだったろう。ある意味「定型」にハマった皮肉を少し感じる。
それは前述だが、撮影と音楽の至らなさが「定型」に寄与している点も大きい。やはり三位一体感は薄れている。(けっして懐古したい訳じゃなく)


なぜ小説家は遠野と別れたのだろう?
それだけ好きなのに、
なぜその手を学生時代離した?

ここも実はわかるようでわからない。
こう書くと「堅いこと言うなよ」と自分でも思うが、いや、ヘソだわ。大事なWHY
その点実は抜け切っていないと感じる。

福山雅治はずいぶん岩井俊二本人の《形態模写》に徹していた。だからモロ自伝的な私小説映画となっていた。その点、評価は分かれるだろう。
むろん広瀬すず、女優を存分に愛でた。その女優達の中に木内みどりさんがいたのは嬉しかった。

川村元気は「岩井俊二以前・以後」とhpで語っているが、その通りなのだろう。フォロワーたちの積んできた業界の岩井的表現の中、本物が少し地味に映っただけかもしれない。
「八甲田山のテーマ」には驚きここをチョイスするあたり、やっぱシネフィルの変態だなと感じ嬉しかった。
(以上敬称略)