Ayako

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のAyakoのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

もっと早く見ればよかったと思いつつ、年末のどっぷりと映画の世界に浸れるタイミングでようやく観ることができてよかったです。

幼い頃に母に買ってもらって読んだ『若草物語』。当時は、4人姉妹の姉妹愛を描いた物語くらいにしか理解できておらず、ジョー=ボーイッシュなお転婆娘くらいにしか思っていませんでした。実際、大人としての年月を重ねた今、本作で物語を振り返ってみると、多様な女性の人生の歩み方が肯定されるようになってきている現代でもジョーってかなり先進的な女性なのではというのが、最初の感想。小説の中でさえ、結婚こそが、女主人公が辿るべきゴールであると定められていた19世紀。家族が期待していたであろう、幼馴染のローリーのプロポーズを断り、小説家としての道を歩むべく単身NYへ。なかなか、作家としての芽が出ないなかで、一度は妹のベスのために故郷に戻り、看病に専念するも、妹の看病中に書き上げた小説が念願の小説として出版されることに。出版社の熟練の編集者の言うがままに契約を行わず、相手に利権の交渉を行い、フェアな取引を勝ち取る姿も逞しい限り。(男女の賃金格差が常態化している私たちがいきる現代って何なのでしょうか。。。)また、フレデリックを呼び止め、自分の想いを伝える様子も、ハンサム。まさに自分の人生を自分で切り開いていく、ハンサムウーマン。
とはいえ、一度は断ったローリーと結婚する再チャンスを模索したり、そんな彼と妹のエイミーの婚約を知り、ショックを受けつつも平気なふりを装ったり、そんな女の心情の機微を繊細に演じたシアーシャがとても印象的でした。この辺の心の機微を絶妙な濃淡で描いているのは女性監督のなせる技かなと思ってみたり。

四姉妹の微妙なしこりというか、お互いに抱く、ざらっとした想いをさらっと表現できているのは女性監督ならではなのかなと。ジョーがマーチ四姉妹のなかで圧倒的に聡明で利発な才女であるのに対し、エイミーは常に自分がそんな姉の補欠的なポジションに甘んじるしかないことに強いコンプレックスを抱いており、ジョーが得られなかった2つのもの(伯母のヨーロッパ旅行のアテンド役・ローリーの伴侶)を手に入れた時には、口にはしないもののなんとなくの優越感、ようやく姉が手にできないものを手にした充足感みたいなものが見て取れる。(但し、過度にギスギスせず、ふんわりほのめかす程度に描かれているのがまた良い。)

あとは、マーチ夫人が当時の社会的に定義された女の幸せとは少し違う人生の幸せを手に入れようとする娘ジョーを優しく見守り続ける様子も温かく印象的でした。現代でも多くの母親がゴリ押しするであろうローリーとの復縁についても、「本当にそれが自分の幸せに合致するのか」と逆にジョーを諭す場面は印象的でした。(もしかしたら、すでにローリーとエイミーの婚約を知っていたのかもしれませんが。また、ローリーとエイミーが結婚したことに驚愕するジョーに慮るような温かい母親の眼差しを向けるマーチ夫人がとても印象的。)

ただただジョーの歩むハンサムウーマン街道を描くだけでなく、そのときそのときで弱気になったり、思い悩む心の機微も丁寧に描かれていて、とても良い作品でした。全女子にオススメしたい映画です。

キャストもとても豪華で、ジョーのシアーシャ然り、ローリー役のティモシー然り、繊細な心情描写が上手な俳優さんばかりで、あっという間に映画の世界に入り込むことができました。(まさかルイ・ガレルをこの作品でおめにかけることができるとは。。。)
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