tsutomu

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のtsutomuのレビュー・感想・評価

4.0
多少のネタバレになるかもなので一応ネタバレ注意。

小説「若草物語」をベースにした本作。元々エマワトソンが出ているというだけで興味を持った作品だったため、高めの評価をつけるとは思わなかった。

簡単なあらすじとしては、
女優を夢見る長女、本作の主人公でもある小説家を夢見る次女、画家を夢見る三女、音楽家を夢見る四女のお話し。
それぞれ性格もバラバラでたまに喧嘩もするが姉妹四人仲良く幼少期を過ごし、それぞれの夢に思いを馳せ貧乏ながらも楽しい日々を送っていた。
しかし、大人になるにつれて、それぞれ現実の厳しさを目の当たりにして葛藤する姿が描かれている。

物語は過去と現在を交互に表現していて、それに合わせて過去の明るい情景と現在の暗い雰囲気の映像が切り替わっていた。その結果、観る側にハッキリと明暗を分けた見せ方をしていることで彼女たちの葛藤や苦悩が表現されていたように感じた。

ストーリーの流れとしては若干複雑ではあるが基本的には起承転結ベースで綺麗にまとまっていて最後はハッピーエンドで終わったという印象。小説ベースのため起承転結が綺麗に描かれているとは思ったが、姉妹それぞれの状況や心情の変化が細かく描かれていたことで若干複雑さもあるなと感じた。

印象的なのは、長女と次女だった。
彼女らが印象的だったのは、今の世の中の女性の姿にも近しいものがあると感じたからだと思う。
長女は、姉妹の中で最も煌びやかで豪華な生活を夢見ていたが、結婚相手に選んだのは姉妹の結婚相手の中で最も貧乏な男性だった。
彼女自身、結婚前のシーンでは女優の夢より家庭を持つことを望んで夢が叶ったように見えたが、現在のシーンの高い布生地を買ってしまうのは、幼少期に夢見た生活をまだ諦められていなかったという心情からだったのでは?と感じた。
恋愛映画も割と観るが、夢みた結婚生活は実際苦労が多く、旦那さんだけいれば幸せという理想だけでは暮らしていけない、満足できないという姿がそこにはあった。

次女は本作の主人公ということもあり多く取り上げられているが、幼少期から姉妹のまとめ役としてしっかりしていて、誰よりも現実的な姿が描かれていた。
結婚にあまり興味がなかった姿もそう言ったリアリストな姿から来てるのではないかと思う。幼少期から誰よりも気丈に振る舞っていたが、時折見せる癇癪や感情の起伏の激しさは現実をよく見れるからこそ、甘えがなく、寂しさや弱さがあり誰よりも苦悩していたのではと思った。
そんな彼女だけ最後に自分の夢である小説家を叶える姿は、甘えず自分の信念を貫いた結果から来ているように見えた。

姉妹全体的として観ると、
四女は若干例外かもしれないが、長女、三女は、夢に強い思いを馳せたが、大人になるにつれて妥協し、夢を諦めて現実に納得する姿があった。
一方で次女は、夢を見ながらも現実の厳しさをよく理解していたが、最後まで夢を諦めず自分の夢を叶えることができた姿があり、
始まりは同じでもそれぞれ多少的な人生の歩み方があり見ていてとても面白いと感じた。

ご近所のローリーについても、なかなか面白かった。
幼少期は、姉妹の注目の的で本人もそれを自覚している綺麗な姿があり次女に好意を持っていたが、現在の姿では堕落し最終的には幼少期に1番なさそうだった三女と結婚している。
かっこいい王子様感があった彼が、ラスト間際に次女の結婚相手となる男性が気になって「彼は誰だ」と連呼するシーンは少し滑稽だった。

長くなったが、全体を通して、
ここまで登場人物の心情の変化を細かく丁寧に描いている映画はないと思った。海外ドラマのような長時間にわたるものならわかるが、これを約2時間にまとめて、ここまではっきりと心情が伝わるように描かれているのは本当にすごい。
映像の話もそうだが、細かな見せ方やセリフが綺麗に調整されていて最後まで魅入る作品だったと思う。
以上のことから総合的には、この評価になった。
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