いしはらしんすけ

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のいしはらしんすけのレビュー・感想・評価

3.8
1949年版を「予習」した時点で「これはグレタ・ガーウィグ向きだなぁ」と思っていましたが、想定内の会心作でした。

原作的にはおそらく「3」までギリかかってんのかな?とにかく映像化作品だけでも膨大な数があるので、アレンジの革新性については確信持てなかったりしますが、時制を往還しながらエモーションのグルーヴ上げてく手法は、フレッシュ、キレッキレな輝きを放射。

ただストーリーの大筋はオーソドックスなラインをきちんと踏襲していて、印象的なエピソードも適宜チューニングしているとは言え、丁寧に拾われている印象。

キャラクター造型も含め、原作へのリスペクトが感得できるあたりは、改めてこの題材との相性の良さを感じますな。

最大の改変ポイントであるオープニングとエンディングでは、ある種のメタ構造というか、要は主人公・ジョーと、モデルであり原作者であるオルコット、さらにはガーウィグ監督自身が重ねられていて、女性創作者としての力強い主張が、あくまでしなやかな筆致で活写されている。

勿論、超豪華キャストの女優陣の演技は、あらゆる点で大いなる求心力を発揮。

あたしゃ四姉妹の中では三女のベス推しなんですが、エリザ・スカンレンちゃん、愁いのある雰囲気がぴったりでしたね。

エマ・ワトソンのメグもいい意味で世間知らずなお嬢さんっぷりが、その可憐さも相俟って体現されていて良かったです。

と言いつつ、なんつってもメアリーを演じるフローレンス・ピューの存在感は頭抜けてましたな!「ファイティング・ファミリー」「ミッドサマー」に続き、ここでも場外ホームラン級の名演を披露していて、特に原作でも読みどころの一つらしい、主人公・ジョーとの姉妹喧嘩は、最高の演技バトルが堪能できます。

そして並居る女優陣を従えて堂々主役を張るシアーシャ・ローナンは、もはやガーウィグ監督の分身と言うか、作品そのものを肉体を通じて伝えるシャーマンにも思えたり。まだまだこのコンビで傑作をものしてくれそうです。

それぞれのメインシーンが素晴らしいのは勿論、これもこの作品の売りの一つである、四姉妹わちゃわちゃアンサンブルが、ここは相応のアップデートが施されていてニンマリ。

これに加えて四姉妹の母がローラ・ダーン、マーチ伯母さんがメリル・ストリープなんだから、これはもう実力派女優全部乗せ状態!この両者も当然余裕でリアルな人物描写を肉付けしています。

と、前作「レディ・バード」同様、女性キャラには瞠目しっぱなしなんですが、あえて言うならやっぱり男性キャラはいろんな面で「弱い」かなぁ。

せっかくティモシー・シャラメ、ルイ・ガレルといった旬なイケメンを配してる割には、男性陣のドラマはかなり淡白...まあ作品のテーマからすると、方向的には必然っちゃーそうなんですが。

原作から連綿と息づくフェミニズムを、絶妙な濃淡で落とし込みつつ、最終的に「私」の物語として語り直した、タイトル通りの力作か、と。