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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のoggyのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりの新作映画、リスタートを切るには最高の名作だった。
若草物語自体は読んだことなくて、しかも結婚がどうの女の幸せがどうのというテーマは苦手なので、別に見ても見なくてもどっちでもいいかなあ〜と正直思ってました。でも何となくあらすじが気になって、これが大正解。エンドロールが終わってもこれほど余韻から抜けられない映画は久しぶりかもしれない。

まずジョーがニューヨークの人混みを走り抜ける場面が大好き。喜びが必死で抑えようとしても抑えきれず漏れ出てしまうあの疾走、本当にワクワクする。
4人姉妹に母親、それから彼女達を取り巻く人々と比較的登場人物が多めで、しかも過去と現在が頻繁に入れ替わるから初めはしんどいかなあと心配したけどそれも杞憂。それぞれのキャラがしっかり立ってて、でも色で音で世界観を表現してるから全然混乱もしない。ベスが回復したときと亡くなった時の色温度の対比なんかも素晴らしかった。
些細なシーンだけど、ベスがピアノを弾く時に階段に座り込んで演奏に聴き入るローレンスがすごく好き。見守るわけでもなく、きっちりしたスーツが汚れることを気にせず、少し離れて座ってるところが良い。あんまり社交的ではない二人だけどお互いにとって一番の友達だったのかなあと思う。
一番刺さったのはやっぱりジョーとテディの草原の場面。「愛そうとしたけどできなかった」って何度も吐き出すところで嗚咽が漏れるくらい泣いてしまった。傍から見ればジョーはテディを利用してたようなもので、テディにとってはある種裏切られたような思いさえあったかもしれないし、本当に「首を吊った方がマシ」だったんだと思う。ただ、ジョーはジョーで、いわゆる"普通の女(男)"が抱くような感情を、テディに対して持つことができなかった苦しみを抱えていたことも事実だった。
それだけに、フレデリックと小説のようなハッピーエンドを迎えた…で終わればそれまでの2時間が一気に無駄になるところだったけど、そうではなかったので安心。「お金のために彼女を結婚させたんですよ」と言い、さらにビジネスウーマンとして頭角を表すやりとりが挟まれたことで、まったく曖昧になったのが良かった。本当にフレデリックと結婚してたとしてもそうでなかったとしても、スッと受け入れることができる。何より、家族を愛したジョーが、両親と姉妹という枠を超えたもっと大きな家族で暮らしている、それがわかっただけでもう満足でした。

135分の上映時間にふさわしい充実感。本当に良い映画を見れた!
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