このレビューはネタバレを含みます
若草物語は、図書館で読んだ絵本程度にしか知らないので、深い考察はできません。映画を観ての率直な感想を……。
若草物語って、小公女とか足長おじさんなんかに比べると、ちょっと、あらすじがわかりにくいんですよね。
ふわふわとした夢のようなラブストーリーと、生活というリアリズム(病気とか貧困)を、四姉妹(私的にはママも入れたい)がそれぞれの思いで紡いでいく繊細な物語とでもいいましょうか。
個人的主観ですが、女の子は、行動に打算が過ぎった時から、女の子ではなくなり、女になります。
名画「ミツバチのささやき」を観たときにも感じたのですが、小さな姉妹の妹が、とことん夢みる女の子キャラなのに、その姉は10歳にして現実的な思考しかしない"女"キャラでした。
女子って年齢関係なく、早々と"女"的思想を発動する子(エイミー)もいるし、老いても乙女な心をキープし続ける人もいます(黒柳徹子さんとか亜土ちゃん的な)。
この映画は、女の子だった ジョーがあがきにあがきながら、自分らしく(打算も身につけて)女になる話だとわたしは思いました。
ジョーは、編集長に「女が主人公なら、ラストは死ぬ、もしくは愛する人と幸せに結婚する話、どっちかじゃないとウケない」と小説をダメ出しされたり、叔母への読み聞かせは退屈で嫌いと露骨に顔に出した為に叔母さんとのヨーロッパ旅行を行き損ねたりと、辛い空振りな体験をします。
いつまでも自由奔放な女の子気分でいては、当時の風潮では、損をしてしまうことが多かったのです。
姉妹の結婚観をおさらいすると、
長女メグは間違いなく女の子な性格。
打算なく感情のままに結婚をしています。
乙女な気持ちで身分不相応なドレス生地を買ってしまい、その高額な値段が生活を苦しめ、結婚のリアルさに打ちひしがれるエピソードがありました。
エイミーは物心ついた時から"女"なタイプ。打算など息をするように容易くこなしてきた子でしたね。容量よく生きて来たタイプ。
ジョーは、自由奔放な女の子のままでいたかったけど、数々の失敗で傷つき、自分の内面の甘さと向きあい、最終的には、女へと成長していったタイプだと思います。
ジョーの恋愛観。
若草物語の知識が浅いわたしが言うことじゃないかもだけど、ジョーはローリーと、ずっと女の子として恋人モードを楽しんでいたかったんじゃないのかなって思います。
でもローリーは求婚してくる。
結婚には夢のような楽しさだけではなく、リアルが伴う。純粋な好きをキープしつづけることは困難だとわかってるジョーは、ローリーから告白された時、脱・女の子の覚悟をまだ持てなかったんだと思う。
エイミー的な子なら、結婚が恋愛の最高の形だと思って疑わないタイプだからプロポーズされたら喜んで受けるはず。
でも、結婚が恋愛の最高の形と思えなかったジョーは、仔猫のジャレ合いのようなローリーとの楽しい時間が永遠に続いて欲しかったのかもしれない。結婚という現実で学生の恋みたいな初々しい気持ちに終止符を打たれたくなかったのでは？
妹がローリーに好意を持ってることを知りつつ、自分がローリーの求婚を受けるのは大好きな妹のエイミーと気まずい関係になるし、何よりそんな卑怯なことをする自分自身が嫌い。自分の生き方に誇りを持っていたいジョーらしい決断だと感じました。
さまざまな要因も入りこんで、ローリーとジョーは好きあっていても、結婚というスタイルが合わないカップルだったのでしょう。
エイミーと結婚したローリーは、今後、ジョーへの愛は形を変え、頑張っても手に入らなかったかつての憧れの対象物となるはず。
一生涯、心の奥深くで、ジョーに憧れ続けるんだろうなと思います。
ローリーにずっとトキメかれる存在でありたい女の子なジョーの思惑通りなのかもしれません。
ちなみに、わたしが一番魅力的に見えた憧れキャラは4姉妹のママ。
空気のようだけど安心感のある温かな存在が、素晴らしいです。
そして映画で、一番グッときたとこは、まさかの老ローレンスさん。
ベスが居なくなったマーチ家に、入れないで立っている、老ローレンスさんにジーンときた。
あと、ベスがピアノ貰って老ローレンスさんにお礼するシーンも、すごくほっこりしたなー。
本作、感動の名作とか、最高傑作とか、
自分の言葉で伝えようとすると、ピッタリなのが思いつかなくて。
時代も環境も今と違うのに、スケートのシーンも、ピアノ貰うシーンも、男子を見定めするシーンも、現代に置き換えても、あるあるなシーンになっていて、古さを感じない映画でした。
なんか、ホームステイ先で、分厚いアルバムを眺めてるみたいな、始終、圧倒的なアットホームさに身を委ねていた感じに近い。
ホームステイ…したことないですけどね
