Shelby

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のShelbyのレビュー・感想・評価

4.3
「レディ・バード」のグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナンが再タッグを組み、ルイザ・メイ・オルコットの名作小説であり、時代を超えて読み継がれ、女性のバイブルと名高い不朽の名作小説「若草物語」を新たな視点で映画化。南北戦争時代に力強く生きるマーチ家の4姉妹が織りなす物語を、作家志望の次女ジョーを主人公にみずみずしいタッチで描く。しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続けていた。そんなマーチ家の女性たちを描いた作品。

終始涙止まらず。
この時代から女性の将来が、結婚という選択肢しかないことに息苦しさを感じているマイノリティな人々がいたのだと思うと感慨深い。今の時代だからこそ、許容され始めてきたものの、当時はガチガチなステレオタイプ人間が多かった中でどれだけ自分に正直に生きることが難しかったことか。

作中ジョーが

“女の幸せが結婚だけなんておかしい。
そんなの絶対間違ってる!
でも…どうしようもなく孤独なの”

そう泣き叫んだシーンに同じ女性として共感の嵐が吹き荒れ、オマケに目から大量の涙が溢れ出た。ここはもう無理。苦しい。笑
女としてのキャリアも手離したくない、だけど、誰からも愛されないのは辛く、孤独でいて寂しい。そんな心の叫びが、痛いほどよく伝わるシーン。

鑑賞後、最初に思った感想は人生の縮図だなと。
歌って踊らないけどラ・ラ・ランドをみたときの
感想と近い。これが人生。すれ違って、それが結果的に振り返ってみると運命だったのだろうと思える結末。幸せの形なんて人によって基準も違えば、感じる瞬間も違う、ひどく曖昧性の高いもの。そんな形の違う自分たちの幸せを探し抜く4人の姉妹。彼女たちの誰かに自分を重ねずにはいられなくなる場面が至る所に散らばっている。


全編を通して豪華な女優、俳優陣にウットリ。
ティモシーシャラメの失恋に立ち直れずうじうじとしたヘタレ男性像もなかなかオツ。終始、彼が映るシーンは美しさの洪水。

4姉妹が仲良く並んで歩く姿も、屋敷で興奮を抑えきれず一気にその場を華やかにする姿も、男装をして何やら遊ぶ姿も、姦しい彼女らにどうしても一人一人感情移入をしてしまう。あの頃のささやかな幸せを感じていた時とは、また違う女性として新たなステージに各々羽ばたいていった姉妹達。人の意見ではなく、あくまでも全員が自分自身の意思決定で人生を歩んでいく姿がとても印象的。

正直結末をどう捉えるか、という点で自分の中で答えを探し求めることにかなり難航した。

ジョーが描いた作中の中では彼女は結婚し、理想の家庭を築く一方で、自分が手かげたその本が装丁される過程を見つめるシーンを映し出すラスト。家庭を築いたのはあくまでも、編集長からの指示通り結末を書き換えた本の中での結末でしかなく、ジョーは結果的に自由を選んだという筋が
最終的には自分の中で落ち着いた。見る人によって捉え方が別れるような描き方だったように思える。


グレタ・ガーウィグ監督は
『これは私にとって「レディ・バード」以上にパーソナルな映画。私のすべて。私が描きたいのは表現者としての女性、そして女性とお金の物語よ。今まで誰も掘り下げてこなかった側面から原作を描きたかった』と語る。

今や女性が立派に社会進出を果たし、実際に結婚自体に重きを置かなくなった時代がきているからこそ、この物語がより多くの人に触れて欲しいと切に願う。

そして、感じて欲しい。女性という生き物がいかに繊細で、逞しくて、創造性豊かで素晴らしい存在なのかを。
Shelby

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