アキラナウェイ

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.2
小説家を夢見る少女が駆けて行く。
冒頭、目に飛び込んできたそのシーンが監督グレタ・ガーウィグの商標の様に思えた。

活発的で、躍動感のあるジョーを演じたシアーシャ・ローナンは、「レディ・バード」で同監督作品に出演。そして「フランシス・ハ」で、グレタがジョーと同じ様に夢中になってニューヨークの街並みを駆けて行くシーンが印象的だった。

俳優として、監督として、グレタが描くのは、
なりたい自分に向かってひたむきに走る女性の姿。

19世期、マサチューセッツ州を舞台に、四姉妹がそれぞれの"なりたい自分"を目指し、悩み、葛藤する。著者ルイーザ・メル・コットが、自身の家族をモデルに書き上げた自叙伝「若草物語」。

愛する人と結婚する事を夢見る長女メグ(エマ・ワトソン)。

小説家を目指し、結婚以外の女性の幸せを模索する次女ジョー(シアーシャ・ローナン)。

病と闘いながら、家族の誰よりも優しく家族思いな三女ベス(エリザ・スカンレン)。

絵の道を目指すも、経済的な豊かさを求める四女エイミー(フローレンス・ピュー)。

南北戦争に出兵した父の留守を守る母(ローラ・ダーン)と四姉妹の暮らしを描いた過去と、四姉妹がそれぞれの道に進んでいく現在との描写を巧みに交差させ、楽しかったかつての日々と、時に厳しい今を生きる女性達の日々とのギャップを見事に描き出している。

今が旬の主演級クラスの女優を四姉妹に据え、母役のローラ・ダーン、叔母役のメリル・ストリープと、女優陣のキャスティングの豪華さよ。

そして、鳴りを潜める男性キャラクターの中で一際輝くティモシー・シャラメの存在感。

シャラメくん演じるローリーと、ジョーとが互いの想いをぶつけるシーンが素晴らしい。

結婚だけが女性の幸せではない。
そう信じて、小説を書いてきた。
それなのに、堪らなく、寂しい…と独白するジョーの姿も印象的である。

女性の主人公の末路は、結婚か、死か。
編集者の言葉で気付かされる、当時の女性が置かれていた立場の厳しさ。

でも、だからこそ、現代にわざわざ甦えらせた「若草物語」なら、結婚でも死でもないラストシーンをジョーに迎えさせても良かったんじゃないかと、僕は言いたい。

堪らなく、寂しい…。

けど、1人で生きて、1人で夢を叶える道だってある。
女性だとか男性だとかを問わず。

そこまで描けたら、完璧だったのではなかろうか。
グレタさんよ。

あ、フローレンス・ピューのキャラが強過ぎて、実際は四女なのに三女だと勘違いしていたのは、ここだけの話。

そして、美人四姉妹のわちゃわちゃは、「海街diary」と同じ質感で、いつまでも観たくなる中毒性が高く、そんな彼女達の父親に、僕はなりたい。