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恐怖の報酬 オリジナル完全版のとぽとぽのレビュー・感想・評価

4.0
狂気に身を晒せ、さながらニトロ運搬版『地獄の黙示録』もしくは『フィツカラルド』。名作には撮影秘話に困らぬ破天荒さがある、それは作り手の本気・熱量。そしてそれを一度浴びて感じ取ってしまったが最後、本作を否定することは難しい。手に汗握るとはこの事で強制参加型に観客を熱帯雨林のど真ん中に放り込み固唾を呑ませる圧巻の出来。森林の奥に地獄を見た、尋常じゃないテンションと驚き。危機迫る中ヒリヒリと剥き出しの生をこれでもかと感じる。それもこれもトラックを運転することになる四人の男たちの生き様を最初に各々丹念に描いているから。何故このような危険な仕事に身を投じるのか?ここに修正の効くような小細工はなく全てが本物でスクリーンを通り越して蒸し暑さや容赦ない雨まで伝わってきそうなほどで、男臭いもの好きとしてはその危うい感じが一種ロマンというか堪らない。だからより一層感情移入してサスペンスに掛かってしまうよう。それを盛り立てるタンジェリン・ドリームの劇中音楽も舌を巻く素晴らしさで独特な雰囲気を演出してくれている。時代背景を交えたローカライズも巧くドラマでありアドベンチャーだ、あと不思議とユーモラスでもある。いや、これ本当にヴェルナー・ヘルツォークが監督したって言われても驚かないよ。
ウィリアム・フリードキン御大が「1コマも修正する気にならないほど気に入っている自身の最高傑作」と位置付けお墨付きを与え、タランティーノは自身のお気に入り12本&スティーヴン・キングもお気に入りの8本に挙げている本作。仏白黒映画だったオリジナル版しか見たことがなかったので今回は待望の観賞ということでかなり高まってはいたものも、正直見る前は「とは言っても『フレンチ・コネクション』より良いか?」等という野暮な心配もしていましたが杞憂でした。しっかりとオリジナルに乗っ取った展開・見せ場もありつつ変更点も見事で、特にポスタービジュアルにもなっている本編中盤の吊り橋を渡るシーンの冷や冷やといったら息詰まるものがある。映画ファンなら一見の価値ありだろう。

PARAMOUNT PICTURES AND UNIVERSAL PICTURES
PRESENT
TOMATOMETER81 AUDIENCE83
Critic Consensus: Sorcerer, which obstinately motors along on its unpredictable speed, features ambitious sequences of insane white-knuckle tension.
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