これは驚きの詰まった傑作。37秒間、出産時に息をしていなかったため障がいを持って生まれてきた23歳の女性の、自分探しの冒険譚。彼女を取り巻くデリヘル嬢、介護福祉士など多くの人たちが彼女を支え、そして自立へと至る感動作である。
ユマは脳性麻痺を患い、車椅子による生活。シングルマザーの恭子による過剰なまでの面倒看が疎ましい。ユマはコミック雑誌の編集長にアダルト漫画の作品を見せると、「作品は良いがリアルさに欠ける。経験がないから妄想でしかない」と言われる。ならば経験しなければと車椅子で歌舞伎町に繰り出すが見事に失敗。だが歌舞伎町での障がい者専門のデリヘル嬢や介護福祉士との出会いが新たな扉を開くきっかけとなる。彼らの手助けにより、ユマは実父に会い、ある秘密を教えられ、タイへ飛ぶ。そこでユマはようやく自分を発見する。そして成長し、自立した姿で母親のもとへ戻る。娘を解放することで母親も変革を遂げるのだ。
ユマを取り巻く歌舞伎町の風俗嬢、客引き、ホストなどがみんな良い人ばかり。だがそれは作品の瑕ではない。彼女の成長の手助けとなっている。すべての人たちが彼女の守護神なのだ。
ヒロインのユマを演じるのは、健常者の演技を嫌った監督がオーディションで見出した佳山明。彼女自身も実際に脳性麻痺を患う女性だ。
ちなみに車椅子の俳優は『おそいひと』(04)『堀川中立売』(10)の住田雅清がいる。彼も脳性麻痺を患い、不自由な肢体だが、車椅子を操る悪役として強烈な印象を残した。その後の住田の出演作が途絶えているのは残念。余談はさておき、佳山明の明るい前向きなキャラが次回作ではどのような顔を見せてくれるのか楽しみだ。