建野友保

37セカンズの建野友保のレビュー・感想・評価

37セカンズ(2019年製作の映画)
4.7
HIKARI監督の瑞々しい感性、独創的な世界の切り取り方に圧倒された作品。現時点で2020年度1位候補です。今後、ますます注目を集める新進監督だと思います。
冒頭の、母娘の入浴シーンから、ただ者ではない作品だということを予感しましたが、最後まで魅了されっぱなし。いわゆる「障害者もの」の映画にありがちな固定観念を取り払った描き方、彼ら・彼女らが遭遇するであろう局面をていねいに拾い上げ、盛り込んだHIKARI監督の緻密さにも深く感じ入りました。本物の母親にしか見えなかった神野三鈴さんの演技、本物の介助者にしか見えなかった大東駿介さんの演技にも拍手です。
この映画はユマの成長・冒険物語である点が重要ですが、母親の葛藤が描かれている点も重要だと思います。母親は死ぬまで自分が面倒を見ようとし、娘はそれを過保護と受け止め、訝しく思う。入浴シーンにおける母娘の仕草や表情が饒舌に物語っていて、このシーンが秀逸だと思いました。
もちろんツッコミどころが全くないわけではなく、例えば不随意運動が伴うであろうCPの障害者に、手先の細かい線が描けるのか、という点は気にはなりましたが、重箱の隅だという気もします。
建野友保

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