じゅんP

アジア三面鏡2018:JOURNEYのじゅんPのレビュー・感想・評価

アジア三面鏡2018:JOURNEY(2018年製作の映画)
3.0
旅をテーマに、3篇から成るオムニバス。オムニバス作品の中には無理くり共通項で括ってるだけに見えるものもありますが、これは調和が取れていてひとつの映画に見えました。

『海』
舞台は中国。冒頭から延々、世の中のありったけの不満を集めたかのように愚痴・自分の都合や感情を吐き出しまくる母親と、それを気怠そうに聞き流し、でも鬱積するものはあるのでたまに堰を切ったように言い返す娘。見た目から豊かな生活を送ってるであろう彼女らの旅はとにかくつまんなそうなんですが、その目的が徐々に明らかになり…。

この話が一番強度があって、膨らませれば長編にできそうだった。それだけにセットアップに時間がかかっていて、その後の移ろいをもう少しゆっくり見てみたかったけど。

『碧朱』
舞台はミャンマー。ミャンマー最大の都市の足を支える電車の速度を倍にするプロジェクトのため、日本から派遣された主人公(長谷川博己)。しかし、その環状線に根差した人々の営みを見るにつけ、自分の仕事、ひいては生き方への疑問が浮かび上がり…。

良くも悪くも、多くの日本人が持ってそうな東南アジアへの視点。単純に異国の風景の切り取り方って意味では断トツで惹かれたし、停電へのリアクションの対比とかも面白いんだけど、この尺だと最後がテーマ広げすぎててぼやけるというか、ミニマルに2人の話で終わっても良かった気がします。

『第三の変数』
舞台は日本。インドネシアから旅行にやって来た夫婦。パッと見は仲良さそうだけど節々にちょっと倦怠期なのかなって関係性が見えてくる。めちゃくちゃ怪しい民泊に宿泊することになった彼らは…。

前の二本が、旅の中でのちょっとした非日常をもって、押し寄せる理性的な日常に対抗しようとする話なのに対して、道は同じなれど非日常の度合いが完全に狂気。タイトルはこの映画における立ち位置って意図もあるんじゃないかと。一番いびつなんですが、後々印象に残るとすればたぶんこれ。旅ってそーいう側面もあると思う。思わぬところで気持ち悪いもん見ちゃったな、良い意味で。
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