kakko

マイ・ブックショップのkakkoのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブックショップ(2017年製作の映画)
2.2

このレビューはネタバレを含みます

美しい映像詩と昭和30年代日本にあったかもしれないストーリー

映像と音楽が美しいちょっとビターな英国映画。
1959年、本屋が一軒もない小さな港町。16年前の第ニ次大戦で夫をなくしたフローレンスが町外れのオールドハウスを買い、夫との夢だった本屋を開く(このあたりは須賀敦子?)。
やがてオールドハウスを巡って街の権力者であるマダムと対峙する。登場人物には第一次大戦で心を病んだ読書家の引きこもり老人(まるでサリンジャー)、やはり一次大戦の影を持つマダムの夫、書店の手伝いに来る「本が嫌いな」少女ほか。小道具はナボコフの「ロリータ」ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」といった本や、古い館や村、街並み、石油ストーブ…

時代のかもし出す匂いといい、田舎の意固地なコミュニティといい、権力対個人の構造といい、昭和30年代が舞台の松本清張の短編ミステリーみたいだ。残念なのは、悪人に清張作品のような人間的魅力や深みがないこと。勧善懲悪。可哀想な良い人たちと悪人の物語なのだ。
プロットも仕掛けもリアリティには欠ける。そもそも、ほとんどが本に無縁の田舎町で、出版されて間もない「ロリータ」を250冊も仕入れて飛ぶように売れるのか?

とは言え、人の距離感、景色のスケール感、どんよりたれこむ空、リバティプリントのワンピース、壁紙、カーディガン、小物や色合いなどディテールになんだか懐かしい匂いが。
映像詩として見るとキュートな映画。
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