春21号

楽園の春21号のレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
4.2
考えさせられる映画を期待していくと肩透かしを食らうかもしれない

フィルムマークの評価が低いので内心ビクビクしていった。
この手の重厚な人間ドラマにおいてフィルムマークの評価はすこぶるいい傾向にあると思っていたからひょっとしたらズッコケ作品になっているんじゃないかと思ったのだ。

で、観てみるとその心配は全くなかった。個人的には良作だと思う。そして同時にフィルムマークの評価がイマイチなのにも納得がいった。
この手の作品の大まかな持ち味は俳優さん達の演技力と撮影とそして考えさせられるストーリーだと思う。
この作品にも前2つの要素はあるんだけど最後の要素考えさせられるというのは随分と省かれてると思った。
とにかく起きることは起きるんだと言わんばかりに悲惨なことが起こり事が起きた後は割と人物を切り離して次の展開へと向かう。
登場人物たちが何を考えているのかイマイチ掴めないある種突き放したクールなやり方を徹底して冷徹ともいうべきやり方で開始0秒から終了寸前まで続ける。
しみじみ考えさせられるなんて事は一切なく、観客は戸惑いにも似た感情を抱くかもしれない

僕自身も見ている途中で展開に全く余白がないのでヘトヘトしたが最後の最後、主人公的存在が行き着く領域を見たとき全てに合点がいった気がした。

起きる事は起きるんだ。だけどそれを受け止めるんだ。という事
めちゃくちゃシンプルでもこれ以上の回答はひょっとしたら人生において得られないかも知れないそう思わせてくれるほどに力強いメッセージ

誰もがY時路の前にいる。
どちからは不幸でどちらかはそうではない
そんな選択が嫌というほど目の前に広がっている。
繰り返すが起きる事は起きる。避けられない、Y時路を進み続けても楽園はやってこないのかもしれない
でもよそ見はしない、また新たな不幸を産むから、
前を向いて進み続けるしかない
春21号

春21号