キャサリン子

楽園のキャサリン子のレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
4.0
小さな集落のY字路で、学校帰りの女児が忽然と姿を消した。
誘拐事件として未解決のまま時だけが流れ、12年後、再び同じ場所で少女行方不明事件が起こる。
2つの事件の容疑者として疑われた外国人の青年、
自分のせいで親友が誘拐されたと自分を責め続ける少女、
ちょっとした誤解から村八分にされ孤立してしまった男。
とある限界集落を舞台に人間の持つ卑しさや残酷さを炙り出し、日本社会の縮図を描いたサスペンス。

余韻がハンパない。
観終わってから暫くは茫然としてしまった。
レビュー評価が低いのは、モヤモヤが残るからですかね?
確かに「本当のところどうなの?」ってのはあるけど、この作品にいたっては大事なのはそこじゃない。
人間は、自分の安心・心の平和のためなら、無自覚に人を殺してしまうくらい残酷で卑劣な面を持っていることをこの作品は伝えたかったのだと思う。

本作では、外国人の青年がなんの根拠もないのに村人たちから疑われて勝手に犯人に仕立てあげられる。
誰かを標的にすることで、村の大部分の人が安心=心地よいと思えるような『楽園』を作ろうとする。
心の平穏のために、異質なものを「魔女狩り」の生け贄にする。

この映画の集落は、わりとどこにでもあるちっとも珍しくない話。
学校や会社などの“集落”でもよくあることで、保守的で同調圧力が絶対である日本社会そのものかと。
誰かを犯人に仕立て上げれば、平和で穏やかな『楽園』を作れると皆信じている。
でも、それは『本当の楽園』と言えるのか?


ドローンを使用した美しい田園風景に、哀しみや切なさが一層増した。
キャサリン子

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