キヲシ

ぼけますから、よろしくお願いします。のキヲシのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ラストで腰が曲がる前のよそ行きを着た二人が水路脇の道路を歩いてくる…そしてカットが変わり、現在の二人がよろよろと歩いてくる。同じように笑顔を見せて…。なんというか時間の歩みや重みをしみじみ感じる。大正生まれ、すっかり耳は遠くなっている、鼻歌交じりに活字を追う父親。昭和一桁、書道が趣味で社交的、ある日の献立は鰈の煮付け、平目の刺身、牡蠣の炊き込みご飯!、洗濯のすすぎはなんと手洗い!という母親。認知症が進み「死にたい」と泣きながら訴える母にいつも穏やかな父が怒鳴り返す、という修羅場も映っているのだが、娘である監督のカメラは常に冷静かつ穏やかな視線のまま。家事を担い始めた父親が少し離れたスーパーへ歩いて買い物に。腰はすっかり曲がり行きはまだいいが、帰りは両手にレジ袋をぶら下げて休み休み。嗚咽とともに伸ばす母の手をしっかり握る父。なにより母のくしゃっとした笑顔が印象に残る。「ぼけますから、よろしくお願いします」か…。介護保険制度の有難みを感じるところだが、パーティー祭りの最中、改悪に次ぐ改悪がしれっと行われている!詳しくは上野千鶴子のユーチューブ等を参照。
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