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グリーンブックのmasakaのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

黒人の天才ピアニストが口のうまさと腕っぷしだけで生きてきたクラブの用心棒をドライバーに雇って、人種差別の激しいアメリカ南部を横断します。

3つの博士号を持ち、洗練された言動の如何にも上流階級然とした黒人ピアニスト・ドクと、でっぷりした腹に汚い言葉遣い、粗野な下町育ちの白人ドライバー兼ボディーガードのトニーの対比と、当時の南部の人々の息をするように自然な差別意識を(やってる事は結構エゲツないのに)サラリと、それこそ日常的な描写として描いている。

白人の社会では間違いなくトニーは鼻つまみ者で忌避される存在なのに、それでも「白人と黒人」という場であればぴしっとスーツを着こなす紳士的なドクよりも優遇されるちぐはぐさ。
黒人専用の旅行情報誌であるグリーンブックも、南部を網羅してるにも関わらず、とても薄い。
ドクをVIPと呼びながら、まともな楽屋も用意せず、それが矛盾した言動だとも思っていない南部の人々。
サラリと描いているからこそ、差別が特別な事じゃないことが伝わってくる。

この映画を「黒人の危機を白人が救う白人賞賛映画」とか、ドクを「白人が好む黒人」と言って批判する人もいるらしいですが、じゃあその人達はこの時代に黒人が差別される事から発生した危機を自力で平和的に解決できたと本気で考えてるのか?と問いたい。時間をかければ出来たかもしれないけど、この旅は期限付き。だからこその危機でもあるのに。
それに、「白人好みの黒人」であるドクですら、一晩たりとも一人で出歩いて無事だった夜はない、という事をもっと考えるべきだろうとも思う。

でも、この映画の主題はあくまでもドクとトニーの友情であり、人種差別問題ではない。
2人はどちらも欠けてるものがあって、それが2人が出会った事でほんのちょっと埋まり、ほんのすこしだけ救われる。
そういう優しい映画です。

ところで、私的に一番イラっと来たのが、ドクのチームメンバーのロシア人2人。ちょこちょこと出てきては訳知り顔でドクの行動を賞賛したりトニーを牽制するんだけど、それだけ。ドクを賞賛する割に、差別の現場を見ても何もしない。ただ見てるだけ。なのに偉そうで、多分「綺麗ごとをいうだけで何もしないその他大勢」のメタファーとか何とかかもしれないけど、そんなことより終盤辺りは本当にイラっとしたので、その分0.3引いて、スコア3.7です。
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