今もなお存在するという黒人差別。
本作品の1960年代はそれがもっと色濃かったのだろう。コンサートでは、雇い主にピアノの種類を依頼でき、観客からは拍手喝采のピアニストですら、黒人というだけで食事やトイレの場所となると差別されてしまうのだ。
私は差別を受けたことのない傍観者として映画を見ている。
ドクの悔しさはいかばかりだったか。
天才なるが故に、家族も友人もいない彼の孤独が相まって爆発するシーンは、そんな自分にも強く響いた。
そして白人側の主人公のトニー。
何でも"うまく"こなしてきた彼も、旅の中でドクから学び、変わっていく様子がよかった。ピアノを聞く姿もなんとも愛おしい。
黒人差別について前述したが、この映画はその部分だけにとらわれない。
そもそも、白人だってイタリア系やアイルランド系もいるし、そんな差別のツールなんてそこらじゅうにある。
問題なのは違いではなく、1人の人間の心。
白人だって、黒人だって、警官だって、いい奴もいれば悪い奴もいる。
関わり合っていくことで、人は変わっていけるのだ。
一見当たり前かもしれないけど、誰もが恐れて向き合えていないことを、爽やかに暖かく教えてくれた。
ドクがツアーを通してやりたかったこと。
そして、ツアーの果てにドク自身にも訪れた変化とは。
最高でした!