しゅんまつもと

グリーンブックのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.0
今面白い映画って?と言われたら誰にでも迷わずおすすめできるウェルメイドな映画だった。

訪問、演奏、食事、手紙、パトカー、繰り返し反復される行動から、些細な人の変化を見出す。無意識な差別は無意識に溶けていく。
車に同乗する、ということにも確かにそれ以上の意味があるし、車が止まってしまうときには何かが停滞する。最後まで運転席と助手席で隣合わなかったトニーとドンの関係が、最後にはどのように変化したのか。この瞬間が個人的にはとても虚を突かれた。

人種差別、物語上明かされていないことを含める差別など、今もある深刻な問題を抱えた映画ではあるけど、もっと普遍的に、「どこにも属せない辛さ、孤独感」とか「誰にも言えない想い」を少しでも抱えたことのある人なら、彼らの気持ちに少しでも気付けるはず。雨の中でたまらず怒りと悲しみと虚しさを吐露する彼を見たとき、この気持ち知ってると思えるはず。

または手紙を書くということ。学のないトニーにドクがロマンティックな言い回しを教える、という一幕ではあるけど、
最後に思い返すと、これまで生きてきた中で、まっすぐに誰かに想いを伝えることのできなかったドクにとっての、誰かへの届かなかったラブレターにもなり得るんじゃないかと思った。
トニーからドロレスへのラブレターを通して、彼がかつて想いを寄せた誰かに送れなかったラブレターが時を越えて届くのだ。

この映画にもそんな時を越えて届く想いが確かにある。