しげのかいり

愚なる妻のしげのかいりのレビュー・感想・評価

愚なる妻(1921年製作の映画)
4.2
嘘くさい朝食(主食はキャビア!)から始まるこの作品は「ニセ伯爵」の話である。伯爵で偉そうにしていた所で本性はたかが「人間」そのようなみんなが見たい「本性」を覗き込む映画だ。そして、伯爵は気持ち悪いけど、その気持ち悪さを断罪する権利は女たちにはない。何故なら伯爵に取り憑こうとする女たちもまた、伯爵の卑劣な行為や不倫を見て嫉妬や汚い感情に溺れる「愚かなる妻」であるからだ。
話は変わるが、淀長が命名した蓮實重彦のあだ名「ニセ伯爵」はここからとられるんだなと。つまり現実のシュトロハイムも嘘八百で「伯爵」を名乗っていたそうで、中身がないけど、形式を徹底的に模倣した結果出てくる威厳というのは、蓮實重彦の振る舞いにも言える話だろうね。蓮實は淀長のような粋人ではなく、粋な物言いのフォーマットを徹底的に模倣した贋作の人であるからだ。この「ニセ伯爵」は、淀長のような「貴族」ではないから、淀長が嫌ったペキンパー作品も、評価できたと言えるかもしれない。