湯っ子

いろとりどりの親子の湯っ子のレビュー・感想・評価

いろとりどりの親子(2018年製作の映画)
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観て良かった、と心から思える作品だった。
幸せのかたちはさまざまということを、きれいごとではなく、でもあたたかく、わかりやすく切り取って伝えてくれる。

「愛と受容は違う」。本作の語り手である、作家アンドリュー・ソロモンの言葉が強く響いた。

認知症ケアの中で最も重要とされること、それは「受容」と言われている。認知症の方が、どんなにとんちんかんなことやまちがったことを言っていても、「それは違うよ」と否定したり、訂正したりしないこと。そしてその方がどういう気持ちなのかに思いをはせ、共感すること。
私を含め介護職の人間は、それを技術としてやっている。それが仕事だから。

家族が身内を介護するのが大変なのは、介護職のように「時間がきたらさようなら」ではないということも大きいけど、そこに「愛」があるからなのかもしれない。この「愛と受容は違う」という言葉からそう思い当たった。
「受容」のかたちはある程度一定で穏やかであるけれども、「愛」のかたちはさまざまで、時には牙を向くものでもある。

家族関係や親子関係が難しくこじれてしまうことも、「愛」があればこそ。だけどそれでも人は「愛」を求めて、「愛」に苦しむ。
愛し愛される人に受容されるのがいちばんではあるけれども、それが難しい時は、第三者の受容に身をまかせることで、自分自身を受容できることもあるかもしれない。
本作に登場する家族も、コアな家族だけではなく、まわりの人々や専門家のサポートを上手に受けていた。
目の前の幸せを知るためには、視野を広くすることも大切だな。

いろとりどりの親子たち、いろとりどりの幸せを知ることができてよかった。
genarowlandsさん、素晴らしい作品のご紹介をありがとうございました。
湯っ子

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