HiroyMori

峠 最後のサムライのHiroyMoriのネタバレレビュー・内容・結末

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

原作の大ファン。幕末をいろんな人物からの目線で描く司馬遼太郎の本の中で一番好きな一冊です。
映画化が嬉しくて封切日に鑑賞。面白かったら何回でも観ようと思っておりましたが、思い入れのある本と言うこともあるので、期待しすぎない様に観にきました。

大政奉還の慶喜のシーンからスタートする、継之助の人生の終盤のみをクローズアップしたと言う意図が見える始まりから、「峠」と言う本の面白さは期待できない事を覚悟させられます。

原作をどのように映画にするのか、脚本が非常に難しいと思ってましたが、やはり映像や音が備わった状態でも、原作で設定された河井継之助を表現するのがとても大変な感じになっていました。

映画序盤の、強烈に退屈かつ謎な状況のシーンの数々は、原作で丁寧に描き込まれた継之助の人物像をそれなりに再現すべくエピソードを散りばめてありますが、余程原作を読み込んでいないとほぼ何の演出なのか意味不明な感じになっています。

見方によっては、すごく真面目に原作での人物像の再現に努めているような気もしましたが、映画として娯楽性も織り込まなければならない事もあり、峠を描きたいのか、河合継之助そのものを描きたいのかがよくわからないまま映画は終わります。

役所広司さんはやはり上手な俳優さんで、藩の若党共との喧嘩のシーンは本で描かれる継之助の間合いを表現しておりましたが、原作を読まないで見てしまうと、若党共の謎の腰抜け具合が全くの意味不明になってしまう事でしょう。
また史実での継之助は40代前半で戦没しますが、役所広司さんの実年齢との差が凄い。
映画のCMを見て「え?」と思いましたが、映画を見て違和感少なく見ることはできたものの他にも良い俳優さんはいたのではないかと感じてます。

キャストはなかなかの方達が並んでいます。
小山良運役の佐々木蔵之介さんはもっと描いても良かったのではないかと思うくらいにシーンが少ないのは勿体無かったですし、AKIRAさん思しき人がいるなと観てましたが、実際の豪傑の役でハマり役な感じなのに、その辺りは何も演出されてないのも残念でした。

最後のサムライと言うタイトルはなんなんだろうと思いましたが、最近多い「製作委員会」の弊害でしょうかね。万人が楽しめる映画と言う娯楽のために作らなければならないことは承知していますが、何から何まで中途半端になってしまった映画に感じました。娯楽にするならもっと振り切っても良いし、再現するならもっと重たくしても良かったのに。監督、脚本は重鎮の方。昔作りの日本映画のよくない方が多く出てしまった感じを受けました。
映画館での再鑑賞は見送ることにします。
HiroyMori

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