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峠 最後のサムライのIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
2.9
ん〜どーでしょー。公開を楽しみに待っていた映画のひとつだったので、なんと言うか…。
私が子供の頃は、毎日のように時代劇が放送されていました。水戸の黄門様に遠山の金さんに銭形平次、江戸の将軍様といえば「暴れん坊将軍」の徳川吉宗でした。ちなみに「暴れん坊将軍」と言葉だけ見れば、さぞ手のつけられない暴君のようですが、内容は将軍様が貧乏侍に扮して庶民の生活に紛れ、悪い奴をとっちめるという痛快時代劇でした。当時の時代劇といえば、ほとんどが勧善懲悪で、庶民を助けることがサムライの基本的な哲学だと、子供ながらに知るわけです。
二十歳頃になると、歴史小説の面白さに気づきまして、以来、面白そうなものを見つけたら読んでみたりします。歴史上実在した人物が、その時代をどのように生きたのか、それぞれの作家さん達が史実から物語を考え、作るわけですが、作家さんの推測で人物像も変わったりします。それでも、基本的にサムライといえば、戦国時代なら天下泰平もしくは領国の民のため、幕末なら日本の行く末のため、と「世のため人のため」という考え方がどれも根底にあるように思います。
映画「峠 最後のサムライ」は、司馬遼太郎原作で、主役は長岡藩の河井継之助。幕末は多くの傑物が登場した時代なので、この時代の英傑の考えや生き方を知るには、まあまあ良い映画かと思いました。映像も良かったし、演じた役所広司も、実際の継之助の年齢より少々歳がいっている事以外、とても良かった。でも、なんか物足りない…。
原作を読んだ人は、たぶんみんな同じように感じると思う。上・中・下巻とある長編小説の上巻の内容をほぼ端折ったのは、それはそれで潔くて良いなあと思ったのですが、河井継之助の人となりを知るには、ちょっと端折りすぎたでしょうか。もしくは、北越戦争に特化して、戦争映画にしちゃった方が良かったのでしょうか。いづれにしても、長編小説を2時間の映画にするのは難しいのかなあ、と思ってしまいました。
観賞後、ちょっとモヤモヤしながら、どうやって映画を楽しんだら良いのか考えるに、最近作られた小説原作の時代劇映画を数本観て「峠 最後のサムライ」を観賞すれば、ひとつのジャンルとして楽しめる気がします。マーベル映画が全部面白いかというと、そうでもないっていう理屈です。面白い時代劇映画は他にもあるので、ジャンルとして楽しめる方にはオススメかも。
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