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峠 最後のサムライのbombsquadsのネタバレレビュー・内容・結末

峠 最後のサムライ(2020年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

20221118 自分用忘備録
河井継之助は英雄と呼ぶ人もいるが、下の下の政治家で、要らんことしいで災厄をもたらしただけの人だった。大乱を前に「戦はいかん」と口で言いはしたが、その為すことには悉く「この機にあって英傑たらん」とする欲望があった。
「峠」に隔絶されて世界を知らなかった人ではない。広く世間を見て学んだ人で、時勢を傍観しても良かったし、棹差して流されることもできた人だった。蓄財し藩政を整理し、主家を保ち民を安んじる道も選べたのに、自らが英傑たり得る道を人々に強いて道連れにし、極振りして何もかもを火中に投じてしまった人だった。勝算などなかった。「際どい夢」があっただけだった。
そんなものを英雄と呼べるかどうか。「最後のサムライ」のような言葉で糊塗できるのか、この人を扱うとき常に帯びる緊張はそこから生じている。

映画も、そこできちんと揺れ動いている。「際どい夢」という言葉を使っていたのはことに素晴らしかった。役所広司さんは好演だったが、自ら恃むところが大きかった河井という人間が、恃んだ自分こそが実はもっともちっぽけな器だったということに気づいていない、その囚われ、その気づかなさの狂気を描くには常識的でありすぎたかもしれない。
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