【砂中の楼閣】
2017年作、23分の短編アニメだが、アマプラ見放題に入荷したおかげで出会えた。…これ、沁みますね。
ニジェールはアフリカの地名。かつてサハラ砂漠のキャンプで暮らした後、今はニジェールで子どもたちに教えているという、フクダヒデコさんが創った物語に惚れ込んだスタッフが創り上げたもの。7つの物語を纏めた、うごく絵本。
まずCGがとても的確に、優しく使われていて、眼にするりと入り込む。敢えて例えれば、和風ミッシェル・オスロと言えば近いだろうか。
しかし、映像の素晴らしさの前に、物語の力がすごいんだよね！
フクダさんのプロフは上記のこと位しかわからないが、砂漠で暮らした経験はしっかり反映されていると感じる。机上でぽやんと空想したのではなく、生活から生まれた物語…というのか、ちゃんと砂漠に錨を下ろして語っているような重みがある。
そうでないと、アフリカの子供たちにもきっと、響かないのでしょう。
どのエピソードも、個として強くあれ！と言っている。アフリカでは、そう目指さないと生きられないのかもしれないが、日本でも同じでしょう。現在、引きこもっていようが、キツイ職場に居ようが。
空想に耽溺するのではなく、そうした、自分の足で立て！と何気に励まされる物語力が素晴らしい。
それでいて最後のエピソードなど、現実社会の課題も挙げた上で、子供たちへその未来を、託すようにも受け取れる。
惜しいな、と感じたのは、物語を反芻する余韻が、本作では足りないかな？ということ。オムニバスという構成では、ついて回る課題でしょうけれど。
しかし、こういう質の作品は、世界に広まって欲しいなあ…とスナオに思います。
<2024.9.28記>
