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ジョーカーのよのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.9
引き込まれるのではなく、引きずり込まれるような映画。
人の内奥やその多様性を映し出すことに向き合った作品の多くがネガティブなイメージを内包し、そこに表現される出来事を通して受け手は多くの感覚を想起する。フィクションのなかで表現される倫理的な異常のなかに自分のインモラルな欠片を見る。狂気性よりも、逆にアーサーの普遍的な人間性にゾッとした。誰しもが心に小さなジョーカーを飼っているのではないだろうか?
アメリカは世界的に見ても人種や経済の格差が大きく、そんな中ジョーカーは誕生"させられて"しまった。何十年も必死に普通になろうと足掻いてきたアーサーはジョーカーになってしまった。悲しい喜劇だ。

狂気とは、常軌を逸脱した精神状態を表す普通名詞であるが、使う側の恣意的に使われる側面もある。「狂っているのは自分か、世間か」。
凡百の表現で絶賛することは出来ない作品。名作であり問題作。
よ