200グラム

ジョーカーの200グラムのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
3.5
不条理に囲まれた1人の人間が、その不条理から自分を守ろうとした姿を見た。その結果、狂人になれ果ててしまったのだけれど。


映画を通して、アーサーはアイデンティティを獲得し、ジョーカーという自身に爆弾を抱えた危うい人間となっていったようだった。


この社会に常に既に存在する不条理さを浮き彫りにしている映画であると思う。


最後のシーンの、「いいジョークを思いついた」とジョーカーがカウンセラーに言ったところで、それまでの映画全体がジョーカーの妄想(ジョーク)であったとも考えられる。こう解釈すると、ジョーカーという名前は確かにアーサーを端的に表していると納得がいく。

狂ってしまったジョーカーの中で妄想と現実が交錯し、すべてが同じような半現実あるいは半非現実のような世界になっているからこそ、失うものがなく自己中心的で傍若無人な言動ができたのかもしれない。



………
《追記》
ずっと人を笑わせるコメディアンになりたかったアーサー。本当のところアーサーは心に傷を負った自分自身を心から笑わせたかったのかもしれない。
コメディアンになりたいという夢は、彼自身のエゴだったとも考えられるのだ。
映画の最後でアーサーは自分自身に対して、本当のコメディアンになったように思えた。
これまで自分を守るために笑っていたあるいは笑いたくないのに笑わざるを得なかったアーサーは、ジョーカーとなったことによって心から笑っていたように見えた。
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