yossie

ジョーカーのyossieのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ヒースのずる賢く攻撃的なジョーカーとは対照的。

生活も貧しく精神的な病気も抱えているアーサー。笑いたくなくても自分の意思とは関係なく大きな声を立てて笑ってしまう…恐らく極度の緊張状態になると出るのだろう。人から誤解を受けやすく他人の目を気にして生きてきたアーサー。社会に適応できずに病気の補助を受けながら日々ようやくピエロの仕事をしながら母と暮らしている感じだ。
ゴッサムシティの街は財政難。日々荒廃し、アーサーの病気の診察や薬の補助もストップする。アーサーの身の回りの環境はどんどん悪くなる。母親がアーサーをハッピーと呼ぶ。恐らく常にハッピーな気持ちで、っていう母の願いなのだろうが、彼が世の中から受ける仕打ちからは皮肉にしか感じられない。
それでもたった一人の肉親である母を大事にするアーサー。母がいて母の愛を感じていたから彼は穏やかにいられたのだろう。
だから彼には裏切られた気持ちだったのだろう。本当の肉親でなかったこと、幼い頃の自分がその母から受けていた数々の仕打ちの事実。唯一彼の味方で救いになっていたはずなのに。
富裕層の対象である証券マンを殺し、それがしたのがピエロだということで荒廃したゴッサムシティの貧困層のシンボルと化していく。そもそもの原因が襲われたということで安全を案じた同僚から銃を貰った事だったが、アーサーにはそんなものくれなけりゃ銃で仕事を失うことも人を殺すこともなかったと言いたいとこなんだろう。
ピエロの化粧をして出演した呼ばれたショー番組。そもそもこの番組で小馬鹿にされたことが注目を浴びたのだ。射殺事件を告白し番組内で司会者を射殺してテレビを見ていた貧しい市民は暴動を起こす。周りの様子を見て逮捕されながらも社会から阻害されてきて自分の存在意義に疑問を持っていた男が初めて自分の価値を感じられた瞬間だった。

これの前に予習として見たタクシードライバーもキングオブコメディも、主人公は自分の存在意義に固執した。それは時として妄想に浸り妄想の中でスターダムにのし上がる。

ジョーカーの同じアパートの彼女との淡い恋のみならず、母親の事、そもそも病院から出て起きたこと自体のすべて、ジョーカー自体もが妄想の産物。

アーサーの精神的に追い詰められて壊れていく過程が余りにすごすぎてホアキンの内面的描写の素晴らしさを目の当たりに出来る作品。
言われていたタクシードライバーもキングオブコメディもうまい具合にオマージュされていた。

私の中では「羊たちの沈黙」以来の名作と言える存在になりそう。
yossie

yossie