uuukyee

ジョーカーのuuukyeeのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
昨夜のお仕事終わり、台風が来る前に、命をかけて鑑賞して参りました。

結論から述べると、噂通り非常にいい映画でした。大満足です。

まずはホアキン・フェニックス。これはほんとにたまげます。彼の演技だけでスコア5です。

劇中一瞬もアーサーとしての「不自然さ」がなく、ただそれはセリフにもあった、世の中の普通とはかけ離れた「不自然」であり、そしてそれを訴える人々の視線を、アーサーが何よりも1番恐れている様子がもうありありありありと伝わってきました。

誰もアーサーの話を聞いてあげないので、彼が何を考え行動しているのか、その辺少々分かりにくい部分もありましたが、彼の置かれてる現状は痛いくらい突き刺さってきますので全く問題なく感情移入できます(し過ぎます)。

何よりもジョーカーがアーサーとしての仮面を捨てていく、一つ一つのフェーズでの表情、姿勢、目つき、全部が微妙に違って見えて、間が引き立てる演技に完全に酔いしれてしまいました。最高でした。

また、それを引き立たせるのが今作品のビジュアルと音楽。すべてがマッチしてて、とにかく無駄なシーンがないです。

パンツ一丁で拳銃片手に踊ったり、公衆便所でピエロの格好して拳銃片手に踊ったり、でもそれが、僕の好きな説明付かない日常とのギャップを映してて最高にクールでした。ヤバイです。

階段ダンスも良いですが、僕個人はOPのシーンが1番番印象に残ってます。
あれで一気に心掴まれした。
人を笑わせるはずのコメディアン、ピエロ役の人間が、メイクをしながら涙を流す。
自分は、口に指を突っ込んで、無理やりにでもないと笑えない。
頬のドーランをつたう涙がなんとも切なくて、映画史上最速で僕も泣いてしまいました笑


ただ、僕が鑑賞前に最も期待していた部分の、いわゆる「ジョーカー」に求める危うさとか犯罪性とかサイコ感とか類の満足感は正直薄く、「ジョーカーの善」を映画として賛美できる程、今回の作品では悪と暴力が突き抜けてはいなかったと感じました。なのでイマイチそこの部分には、周りの人が言うほど感化されませんでした。
社会がどうのって話は、別に今に始まった訳じゃないですし。


それは、「ジョーカーの善」を成す社会性の諸悪の根源が、福祉、孤独、政治、介護、貧困等々の、逆に普遍的な生活背景にあったからこそ、映画の段階では倫理的かつ道徳的に人を殺すジョーカーの面影に「優しいアーサー」が僕らの理解できそうな範囲で残ってしまったからだと思います。

あとは個人的に終盤の畳み掛けるような負の連鎖に少々マンネリを感じてしまったのと、いつかアーサーの仮面が外されて最終的にジョーカーになるのが分かってしまっている以上、「早くジョーカーが観たい!」欲求があり、緊張感を上回ってしまったからだと思います。。笑

総じます。
期待してた作品とは違いましたが、れっきとした名作です。

色んな考察とか解釈とかが、既に沢山あるかと思いますが、鑑賞後にこうやって、色んな人と色んな事を話せる映画として、それだけでエンタメ的に素晴らしい作品なんじゃないかと思います。

でもそれは、鑑賞した後に、アーサーが見てた景色はどんなんだろうと考えれば考えるほど深みにハマってしまう気がしてまして、結局僕も「理解」できず、彼のJOKEにハマってしまったのだなーと。

"I hope my death makes more cents."
uuukyee

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