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ジョーカーのなのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.3
辛い境遇に生まれたジョーカーの心温まるサクセスストーリー
笑いあり、涙ありの濃密なシナリオにはただただ圧倒される
(ジョーカーが常に笑顔を絶やさないキャラなのもあって見ている自分も自然と笑みがこぼれた)

主人公の長年の夢であったコメディアンデビューを通してヒロインと結ばれるのはまさに爽快
家族愛に関する描写も劇中に多数あり、今年1番のハートフルストーリーと自信を持って言える
家族でもカップルでも間違いなく楽しめる素敵な映画だった

とにかく感情を揺さぶられるし、少しずつ、少しずつ認知が歪んでいく状態を追体験できるのでインスタントに精神病理を味わえる、しかもそれが極上ときている
語り手というか、世界ではなくそれを受け取る主人公がそもそも歪んでいたというパターンの作品は好きで、小説やゲームでも似たようなものをいくつか見てきたけど、映像にするとこんなにゾクゾクするんだなと感動すらした
映像表現はいたって真面目で、社会風刺や古典に気付けば気付くほど楽しめる映画なように感じるが、学がないので真髄を味わえなかった
オマージュやリスペクトを察して、にんまりするのが楽しいのだと思う チャップリンとかね

映像美としても一定の価値があり、なかでも階段の使い方をはじめとし、ジョーカーが陽気にステップを踏みながら堕ちていくシーンは軒並み、徹底的にシンメトリーにこだわった画作りになっており、キューブリック作品に通ずるところもある
というかキューブリック作品やタクシードライバー、小説だとドストエフスキーあたり好きな人はまず見ておいていいと思う
それらより少し真面目に作られているけれど
逆にキューブリックより感情的で、理解しやすくも思える

まあでも既存ファンは賛否両論かも、私はジョーカーに人間味を求めていなかったので同じような人はレビューほど良いと感じない可能性が高い
悪役にはこんな辛い過去があって、お互いの正義をぶつけていたんですよ、仕方ないんですよ、的な展開が苦手だから、いくら可哀想でもまあジョーカーは悪いよねと思える作りはありがたかった
ジョーカーはまあ悪いやつだよね、もっとふざけた終わり方でも良かったのに意外と謙虚かつ硬派だったが

好き嫌いは分かれるけど、質の高い映画であることは間違いない
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