こうた

ジョーカーのこうたのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画を観ている間、常に感情を揺さぶられていました。
それが憐れみだったり、怒りだったり、悲しみだったりするのですが、観終わったときに残ったのは、なんとも言葉に言い表せない感情でした。
アーサーは誰からも相手にされない人間です。そして、最後のテレビに出演するシーンでは、これまで社会でのけものにされていた人間の鬱憤、孤独をすべてぶちまけました。マレーが言うように、アーサーの行動原理は非常に幼稚です。ですが、彼のことを幼稚だと思っている自分は、弱者の視点で彼を見ているのか、それとも、強者の視点で彼を見ているのかを、俯瞰して認識する必要があると思います。昨今は個人主義の考えが広がってきており、貧困をその人の努力不足という一言で片付けてしまう人も多いように感じます。ですが、今いる場所でどれだけ努力しても報われない人、努力することに希望すら持てない人もいます。
最初からジョーカーに共感し、弱者である彼の視点でものを見ていた私が、テレビのシーンでは、強者の視点で彼を観ていました。一つの視点のみで世界を見ると、この世界は自分とは相容れない人種で溢れているような感覚になり、視野狭窄になります。この映画は、普段は気にすることがない自分とは異なった立場の人の視点を与えてくれたと思います。
「ああ面白かった!」で終わる映画ではなく、このような後に引く独特な感覚がある映画が、いわゆる名作と呼ばれるものなのではないかと思います。
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