最近の映画、"日常"から社会を描く作品多いよな…。強いインパクトはないが、カメラワークや音楽は個人的にとても好きだった。

同じような映画と比べるとメッセージ性はそこまで強くないけど、現実的ではある。

レイナルド・マーカス・グリーン監督は本作が初の長編作となるが、いきなりサンダンス国際映画祭で特別審査員賞を受賞し、鮮烈なデビューを飾った。主演3人はいずれもスターとなったのだが、題材がセンシティブなせいだろうか、今のところ日本で公開・配信の目処は立っていない。

おおよそのストーリーを知りたい方は、2014年のエリック・ガーナー窒息死事件を調べてみてほしい。概要はほとんどそっくりそのままで、本作は3人の登場人物の視点から事件を群像劇の様相で描く。事件そのものは言わずもがな、他にもアフリカ系アメリカ人への一方的な偏見や差別描写に満ちていて、非常に嫌な気分にさせられる。

例えば冒頭でいきなり、ジョン・デイヴィット・ワシントン演じるデニスの車を警官が停車させる。このようなDWB(Driving While Black)と呼ばれる偏見は彼らにとって日常茶飯事で、最初から証拠もなく酒気帯び薬物所持を疑われているのである。

プロ野球選手を目指すザイリックは将来有望でスカウトの注目を集めるが、名門大学のコーチが自宅にやってくるシーンには辟易した。野球と関係ないプライベートについて質問し始め、どうせ非行少年なんだろうと決めつけて釘を刺す。こういったシーンが各所に散りばめられており、とにかく鬱屈とした気持ちになる。

一方でアフリカ系アメリカ人の犯罪率の高さは現実問題として存在し、毎日のように危険な相手と至近距離で接していれば防衛本能が高くなるのは当然だ。前科のある人間が勢いよく向かってきたら警官は銃を抜かざるを得ないし、不自然な素振りをした時に撃つなというのは無理がある。

本作はこの点も逃げずに論じているのが見事で、「アフリカ系アメリカ人の警察官」というデニスのキャラクターを通じ、複雑な対立構造に苦しむ彼の内面の葛藤を浮き彫りにしてみせた。ジョン・デイヴィット・ワシントンのパフォーマンスも相まって、デニスのパートは一際目を惹く。

3人の視点から描くと言いつつ、互いのキャラクターにほとんど関連性がないため、全体としてはブツ切りの短編を並べただけになっているのが惜しいが、BLMというテーマに真正面から向き合った意欲作だ。

⚫︎トマトメーター
・批評家支持率：84％
・観客支持率　：69％
「本作は上質な演技とスタイリッシュなビジュアルを用い、タイムリーな物語を思慮深さ・複雑さを伴って表現しており、時に不均一な演出を補う出来映えとなっている。」

• #2018フレッシュトマト