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にっぽん昆虫記のleylaのレビュー・感想・評価

にっぽん昆虫記(1963年製作の映画)
4.3
タイトルもなかなかすごいけど、それを超えてくる強烈な作品。成人映画指定された今村昌平監督のヒット作ですが、そんなにエロいわけではない。

貧しい農家に生まれた主人公、松木とめ(左幸子)の半生を大正、昭和の戦前、戦後にわたって日本の社会背景を絡めながら描く。血は繋がっていない父と娘の近親相姦風の描写、売春、新興宗教、パパ活など、刺激的なストーリー展開に加え、ストップモーションになったり、短歌を詠んだり、音楽や演出もエキセントリック。音楽は黛敏郎。

前半の東北弁の強い訛りと土着的な風景の中での生々しい体験。中盤は東京でコールガールの斡旋を行い騙し騙され生きる逞しさ、後半では中年女性の孤独と悲哀を、主演の左幸子が怪演。脇を固める北村和夫、吉村実子、佐々木すみ江、北村谷栄などもリアリティのある演技で骨太すぎる作品だった。

貧しさが生んだ泥臭い女性の生き方が、どこか明るく逞しい。「まったく浮世は辛いからね」とサラッと言う、とめはカッコいい。

男はみんなエロくてクズ。頭の弱いとめの父ちゃんだけがとめを愛し、とめも父ちゃんを愛していた。だから、とめの乳を吸う父ちゃんを憎めない。

昨日観たドキュメンタリー『ストーリー・オブ・フィルム』のマーク・カズンズ監督の好きな邦画No.1だったので鑑賞したけど、すごいもん観たなぁと圧倒されました。
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