Brynhildr38

居眠り磐音のBrynhildr38のレビュー・感想・評価

居眠り磐音(2019年製作の映画)
3.8
良質な時代劇。
架空の豊後関前藩の藩士で直心影流の達人、坂崎磐音。ある騒動がもとで脱藩し、江戸深川で浪々の日々を送る。ある日、両替商の用心棒を引き受けるが・・・、些事にこだわらず春風のように穏やかな磐音が颯爽と悪を斬る。(原作解説より)

この作品は、エンタメ性に満ちていながらも、伝統的な武士・市井の人々の生き様を感じさせてくれるテイストを持ち、時代劇の魅力を思う存分見せてくれる。

また、松坂桃李の美しい佇まいと確かな演技力が、主人公磐音の背負った哀しみと人としての優しさをそこはかとなく見え隠れするように魅せる。

テンポも良い。

るろうに剣心の様な人間離れしたスピードやワイヤー使っての派手さは無いが、美しく滑らかな殺陣は見る価値あり。

キャストは、若手向き?
強く優しく頭脳も明晰だが不憫な坂崎磐音を演じる松坂桃李は、月代(さかやき)だとカッコ悪いが総髪になると男前、髪型は大事。明るく世話焼きなおこんを演じる木村文乃は、飾らない可愛さと美しさで、はまり役。一途に磐音を想う奈緒を演じる芳根京子は、気が強そうで芯がありながらもどこか儚さを感じさせていたので私は好き。悪徳両替商の阿波屋有楽斎を演じる柄本明は、濃い演技がちょっとやり過ぎ感。

ちなみに、磐音は寝てません。
なのに、なぜこのタイトルなのか?
いわゆる「居眠り剣法」のことでも掛けているのかなと軽く思っていたところへ、「騒動に起因して許嫁である奈緒と離れたのは磐音の自己中で、その後の奈緒の行く末を慮ることなかったのは、それこそ居眠りしてたのかと言わんばかりの浅はかさだった・・・」と、書かれたレビューを読んだ時に、こちらの目が覚めました。

季節は移ろいゆくが、人の心は変わらず、でも全ては取り戻すことのできない過去になってしまったという苦さ・・・、その余韻が切ないです。

シリーズ化を希望。
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