このレビューはネタバレを含みます
2020年10月28日 日比谷シャンテで
・こんな汚れたニコール・キッドマンは、というより女性キャラクターはあまり観たこと
が無い。目の周りやあごのシワなど加齢によるビジュアルだけでなく、荒れた肌や少しかぶれたような目元は彼女の不健康な生活を一発で観客に伝える。
そこで提示されるのは罪の意識に囚われ自堕落に生きる主人公の姿であり、それはまさにノワール作品で男性が演じてきた役そのものであった。
〝強い女性キャラクター〟という時にターミネーター2のリンダ・ハミルトンやエイリアンのシガニー・ウィーバーなどが連想されるが、彼女たちには今作の主人公のような〝汚れた〟感じは無かった。その意味で今作は、少なくとも個人的には、観たことが無い映画の女性像であった。
・ただ映画自体のテンポはとても悪く、ノワールの雰囲気はありながらそこに対する切実さが伝わりづらい作品だったように思う。
恐らくそれは主人公の動機にあたる過去パートをきちんと描いていないからだ。
今作で彼女が過去に犯した過ちとは潜入捜査で入った先の犯罪組織の中に居場所を見出してしまい、通報せずに一緒に犯行に加担しようとしたところにある。
それを描くなら、組織自体やその構成員たちをちゃんと描き、主人公が彼らに受け入れられ、主人公が彼らと打ち解けて行く過程を描かなければならないし、なにより彼らのカリスマ的存在であるサイラスを魅力的に描かなければならなかったと思う。
・↑『ザ・イースト』って映画はこれに成功していたように思う。