しお

アド・アストラのしおのレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
4.3
舞台は近未来。主人公=ブラピは米国宇宙軍の軍人で宇宙飛行士。
あるとき大規模な磁気嵐が発生、多数の死者が出て主人公も死にかける。
磁気嵐はその後も定期的に発生するようになり地球全体に大きな被害をもたらすが、極秘裏に軍の上層部に呼ばれた主人公は同じく宇宙飛行士で前人未到の海王星への飛行の途中で消息を絶った父親が生きており、この磁気嵐の発生に関係しているのではないかという話を聞かされ、父親とコンタクトをとるため有人最前線基地である火星に行き、軍の用意したメッセージを父親に宛て読み上げるという任務を言い渡される。

この映画が観客を宇宙に連れていく力はすごい。
主人公が知らされているのは父親が生きているかもしれないという情報だけで、
他は旅程も同行者も父親へのメッセージも軍が用意したものだ。
説明もそこそこに話は進んで行き、主人公は寡黙。  
状況を把握するためには周りの様子や掲示をよく見て、流れるアナウンスや会話をよく聞いて観客が自分で判断していく必要がある。
そしてそのための情報が画面内に十分用意されている。
宇宙服で気温や触感を遮断された主人公の息遣いを聞きながら、
定期的に行われるメンタルチェックで素っ気なく提示される心情を道標に
主人公と自分をシンクロさせながら銀河の果ての自分を捨てた父親を目指す。

この同期作業はブラピの眉の動きや呼吸の間隔など無言の演技力によって繊細にコントロールされている。
良質な情報をシャワーを浴びるように摂取できるだけでも一見の価値ありだが、
ブラピとトミーリージョーンズの演技力がこの単純なストーリーを「映画」として成立させ、鑑賞後も脳裏に美しくも寂しい星々を刻み付ける。

時間が経って思い返すと、いや反物質って…とか爆発?とか考えちゃうんだけど、それでもこんな長文を書き上げれちゃうくらいには良い映画だったし、週末の外出自粛はヒマ。
いいんだよ俺の宇宙では爆発するんだよ。

個人的なお気に入りは個人用のうっすいタブレットに対し軍用のタブレットはちゃんと分厚いカバーに覆ってあったところと、月にエイリアンの顔はめパネルがおいてあったところ、
個人的にどうでもいいなと思ったのはラストシーンです。
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