さききち

デッドエンドの思い出のさききちのレビュー・感想・評価

デッドエンドの思い出(2018年製作の映画)
3.7
‪監督&田中俊介さんの舞台挨拶付き上映にて。
俳優と男性アイドルグループ、BOYS AND MENのメンバーとして活動する田中さん。『恋のクレイジーロード』で垣間見た凄まじい役作りと演技に魅せられ一気に好きになった。

自己否定の極みと地獄のような痛みによる心のひび割れを、田中俊介さん演ずる西山の言葉が優しく肯定してくれる。展望台のシーンがとても好き。映画が終わり、俺らは日常に戻る。そんな中でも、台詞を反芻して、作品内の言葉をずっと大切にしたくなる優しい作品だった。

ショックを受けた時の思考停止と混乱、ずっと居たいしでも一秒でも早くこの痛みの場から離れたいというあの気持ちが絶妙にリアルに描写されたシーンがすごく良かった。
ちなみにポスターの題字は原作の吉本ばななさんによるものらしい。

『恋のクレイジーロード』のチューヤのイメージが、隠した鋭利さで「跳ね返す」ものだとすると、本作の西山は真逆に「染み入る」感覚。細胞に水が浸透するように、優しさが入り込み僕の/あなたのものになる。カメレオン俳優なんて言うと陳腐になるが、本当に素敵な役者さんだ。
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