朝田

ブラ! ブラ! ブラ! 胸いっぱいの愛を/ブラ物語の朝田のレビュー・感想・評価

3.4
ブラジャーの持ち主をひたすら探す、というコントのようなストーリーではあるが、今作がやっている事は「マッドマックス 怒りのデスロード」に近いとすら思った。つまり、プロットを単純化させる事でアクションのダイナミズムを強調し、その動きによって全てを語っていくという手法。極めて映画的なのだ。さらに今作は台詞を一切用いらない。より、俳優の一挙手一投足に注目させる作りになっている。こうしたアイディアが素晴らしい。演出的な見所も多い。劇中何度も反復されるスリリングな場面として村の中を貨物列車が走りさるシーンがある。ともすれば単調になってしまいそうではある。しかし、列車を下から見上げるように捉えたショットや、村に住んでいる人から列車を捉えたショットを入れる事で、列車の重量感、圧迫感などを強調しさらにそれを車掌側の視点からのショットと交互に見せてゆき、見事に毎回緊張感を生み出している。この一連のシーンだけカット割りのリズムを素早くしたり、車掌側の手元にある速度計のアップを入れたり、市民側のショットだけハンディで捉えたりといった技も細かい。そもそもこうした異様なロケーションを発見した時点で作り手の勝利は約束されているように思えた。荒唐無稽なアイディアを極めて映画的に魅せる意欲作だが、カラックスのファンとしてはドニ・ラヴァンをもう少し活かして欲しかったのと、手法が手法なだけにもう少しタイト(90分以下)に纏めても良いように思えた。
朝田

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