ゆうか

ホワイト・クロウ 伝説のダンサーのゆうかのレビュー・感想・評価

3.8
ソ連のダンサーでありながら西側諸国に亡命し、イギリスでマーゴフォンテインとパートナーシップを組み喝采を浴びたのち、パリ・オペラ座の芸術監督におさまってさまざまな名バレエ作品を演出振付したヌレエフの半生。
上映館数が少ないからか意外に満席で驚きました。

冷戦の中キーロフバレエの仲間とともにパリに公演に訪れそして亡命するまでをメインストーリーとして、バレエを始めた故郷ウファでの情景、レニングラードのバレエ学校で恩師に学びキーロフバレエに入団した頃の場面を交えながら話は進みます。
時系列ごちゃまぜなのは、良いのか悪いのか判断のつきかねる演出でした。
しかし、ヌレエフの傲慢で貪欲な姿は、ストーリーと同じく勢いがあり、惹きつけられます。
自らの芸術の糧とするため、エルミタージュ美術館、ルーブル美術館に足繁く通うエピソードには、禁止されていても積極的に西側諸国のダンサーとコミュニケーションをとる姿と相通ずるものを感じ、破天荒なだけの彼のイメージを覆されました。(努力家というよりも貪欲という言葉が似合いそう)
見所はやはり亡命シーン。まさかの下準備なしの亡命で、彼女らと出会ってなかったり、少しでもタイミングがずれていたら成立しなかった話でしょう。
パリ・オペラ座のその後の成功を見るに、一バレエファンとしては亡命の成功に感謝するばかりです。
彼の今日にまで残る成功、ひいてはバレエ史を変えた偉業はこの亡命がなければ成立しなかったものだったでしょう。

冷戦時のソビエトの締め付けの厳しさについても興味深かったです。国のために決められた場所で踊る、もしくは踊ることを禁じられる。芸術家であり、ピーク年数の短いダンサーには酷な話。

現役ダンサーを主演に据えているだけあって、ラバヤデールや白鳥の湖など、バレエシーンもきちんとおさめられていて満足度抜群でした。
ゆうか

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