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ソン・ランの響きのsobayuのレビュー・感想・評価

ソン・ランの響き(2018年製作の映画)
4.0
ベトナム大衆歌劇カイルオンの役者と借金取りの男、ふたりがたった一晩一緒に居ただけ。出来事としてはそれだけなのに、ふたりの心には一生残るだろう一夜のお話。友情とも反目ともつかないぎこちないやりとりで二人の心は明かされないけど、カイルオンの演目(敵国の王子と姫の悲恋物語)や一見無関係な人々の台詞がふたりの思いを浮かび上がらせる。

80年代ホーチミンの懐かしいような質素な暮らし。光の使い方やインテリアなど、考え抜かれたセンスをビンビン感じた。くすんだ色調のウォンカーワイというか‥。ガァバの種を取るとか、ベッドに他人を寝かせるかとか、主人公ふたりが喋らない分、行動の反復で心情を表現するのもすごく巧みだと思った。

ティーチインで聞いてびっくりしたんだけど、主演ふたりともカイルオン初挑戦だったそう。楽器も唄も一ヶ月訓練して吹替えは使ってないとのこと。特にカイルオンの唄の上手さからして、リン・フン役の人はもともとその道の人にしか見えなかった‥。すごい。
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