蛸

プロメアの蛸のレビュー・感想・評価

プロメア(2019年製作の映画)
4.1
とにかくケレン味のある線、色彩、構図、動き、カメラワークに終始圧倒される。

「炎」が主題のお話だけあって、画面の中で炎をはじめとして色んなエフェクトが展開される(それこそ、煙や、氷、光などなど)。それらのエフェクトは極度に様式化されているのだけれど、デフォルメの仕方が大胆でかっこいい。大胆に様式化されたエフェクトが縦横無尽に画面の中で展開される様がこの映画を象徴しているように思えた。

全編を通して、線の数はそこまで多くないのだけれどガシガシ動くアニメーションが見ていてとても気持ちいい(枚数を使って滑らかな動きを見せるわけじゃなくて、ケレン味のある決め絵を繋いでガシガシ動かす感じ)。荒々しく勢いのある動きが、映画全体のテイストとマッチしていて良かった。
もちろん「勢い」を演出するためには、緻密な計算が必要なわけで……色彩設計とかもすごく計算されてる。
画面の情報量がとても多くなるアクションシーンでも、色遣いとか構図のおかげで「何が起きてるかわからない」ということにはなっていなかったと思う。
モチーフごとに主線の色を変えていたりするところや、パステルカラーを多用しているところが、画面全体に華やかなポップさを与えていて良かった。そういう繊細な心遣いも光っている作品。

よく見ると色んなところで、3DCGが多用されているのだけれど2Dの画の部分との違和感はあまりなかった。『スパイダーバース』とは異なるベクトルで、2Dと3Dの融合を図った作品という側面もあると思う。
それでいて、日本のアニメならではのバンクシーンやカットインもちゃんとあったりする。ぶっちゃけそういう演出って貧乏臭くも見えてしまうんだけれど…今敢えてやることで何か特別な意味が生じてるようにも思えました。

ドラマの展開が大味だったり、説明過多だったりするところはあるけれど、そういう普通の作品だったら負の要素となりかねない部分もそれほど気にはならなかった。
これは一重にアニメーションの気持ちよさによるところだと思う。あと音楽のカッコよさ。
主人公の行動原理が「人命救助」を軸としてブレていなかったところも良かったです。
蛸