ATSUSHI

サマー・オブ・84のATSUSHIのレビュー・感想・評価

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)
4.4
そうよね、こんな惨めな想いをしたくて始めた冒険じゃないのにね…
念願の大阪への一人旅で約束事してた相手からすっぽかされたうえにボッタクリバーに引っかかっちゃって、って誰の話や


『スタンド・バイ・ミー』と『裏窓』がベースに置かれた80sホラーへのオマージュが熱い快作。監督トリオは調べたら揃って『ターボキッド』を完成させたわけだから余計に納得がいく。
※ちなみに映画と関係ない上記は私の実体験です


80sオマージュ満載のジュブナイルホラーということで、我々が求めるものはほぼ固まっている。揃いにそろってモテなさそうなメンツで、楽しくて思わずみんなで乗り出しちゃうミステリーごっこ。その合間に現れる魅惑のシッターに胸をときめかせたり、両親に怒られたりと、思わず頷いてしまう情景の数々は良い意味で期待通り。夜の渚で二人きりのシーン、これを自分に置き換えて見たくなるのは私だけではないはず。

街は少年ばかりを狙う連続殺人鬼の恐怖に怯える真っ只中。この辺りの描写はまた『エルム街』シリーズを思わせたりもして、マニアにも楽しい作り。


しかしこの映画はオマージュとか楽しい思い出だけでは終わらず、少年たちにとっての教訓にも近いあるターニングポイント、物語内としては本当の恐怖がそこから始まる。



自分たちから始めた冒険、夢に見てた生き方、成し遂げようとしたものは必ずしも想像通りとは限らない。その残酷さは結局身をもってでないと分かり得ない。
最後に残った後悔と苦渋はこれからも我を蝕んでいくのだ。


こんな想いのために始めた一夏の冒険じゃないのに