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Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バックのdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.9
【殺さないべいびー】

月一開催の「dm的映画祭」もいよいよ今年のラスト回となりました。
早いね~。
振り返ってみれば、今年も何だかんだでやっぱり「シン・コロナ」に振り回された一年だったような気がするよ。
来年こそは思う存分楽しみたいもんだね。

ってことで今回は「NEVER GOIN'BACK」「大事なことほど小声でささやく」「消えない虹」「ラーゲリより愛を込めて」の4本でした。

どれも中々面白い作品で「色々と考えることが出来るもの」から「お気楽に楽しめるもの」まで、バラエティに富んだラインナップとなりました。

まずトップバッターはこちら「NEVER GOIN’BACK」です。

まぁ~~いい感じで頭悪い映画なんですが、不思議と嫌な気がしない。
ドラッグだの酒だの窃盗だのゲロだのウ○チだの、まぁまぁお下品お下劣のオンパレードなんですが、とにかく主人公のジェシーとアンジェラが可愛くて、やってることはサイテーなのに何故かずっと見ていられる。

少女二人の腐れ縁的な友情映画ではあるんだけど、そういった意味では「べいびーわるきゅーれ」にも通じる部分もありつつ、でも人は殺さない。でもやっぱりえげつないことはそこそこする。
あとエグいセリフもポンポン飛び出すあたりは「ブックスマート」にも似ていたりもするけど、比べてみればあの二人の方が100倍品行方正に感じるくらいに、こっちの方が直球でビッチ。

何だけど「底抜けに明るくて、楽しい事に目がない」という二人を見ていると、何故かこっちまで楽しくなってしまうという不思議な映画

――アンジェラは親友ジェシーの誕生日をサプライズで祝うために、二人きりでガルベストンのビーチで過ごす計画を立てる。
しかし、先立つ資金がないアンジェラは1週間後が期日の家賃をぶっ込んで勝手に契約をしてしまう。

「え?家賃どうするの?」
「バイトでシフト入れまくって頑張ればいいじゃん」
「・・・ま、いっか。私たち頑張ってるもんね!海くらい行ったっていいよね!Yaeh~~~~!」

しかし、そこから想像もしないようなトラブルの数々に巻き込まれていく彼女たち。
果たして二人は無事ガルベストンのビーチを満喫することは出来るのか・・?

っていうお話。

まぁまぁ、ピタゴラスイッチ的に次々とトラブルに見舞われていくんだけど、大半は「自業自得」なもの。
あとは厚切りジェイソン・・・・じゃなくてジェシーのクズ兄ちゃんのダスティンが原因で巻き込まれる災難。

とにかくこの兄ちゃんとそのお友達がアフォすぎて何をやっても上手くいかない。
こいつらはこいつらでヤクの密売という「ハイリスク・ハイリターン」で一攫千金を企むも、ことごとく失敗し、軍資金としてこいつらも「家賃」をあてにしていた。

ダスティンのヘマのせいで家に強盗が入り、捜査に来た警察がたまたま現場検証で入ったジェシーたちの部屋でハッパやコカインを見つけてしまったもんだから、とばっちりで彼女たちが逮捕されてしまう。
そうなると「バイトに行けない」→「家賃が払えなくなる」→「ガルベストンにも行けない」という三段論法が成立。
何とかバイト先の店長に許してもらおうとお店に向かうも、ずっと洗濯していなかった制服を洗わせてもらうために立ち寄った悪友の家では「ドラッグパーティ」の真っ最中だった。

とにかく「これでもか!」っていうくらいに畳掛けるトラブル。
流石の二人も落ち込むか・・・と思いきや、やっぱり天然のポジティブシンキングで「迂回路」を見つけながら目的地に向かって進んでいく。

とかくこういう「若い女の子」が主人公の物語って、「貧困」だったり「学歴社会」だったり「男女間のステイタス的な優劣」「性搾取の対象」「自堕落」のようなドロドロしたベースの上に描かれがちではあると思うんだけど、今作ではあえて狙ってそこら辺を全部排除していたような気がした。

ただ「日々を楽しく生きる」という事だけに特化して前向きに生きる姿を、決して「不道徳だから」と否定的に描くのではなく、彼女たちの価値観を尊重しながら「間違ったっていいじゃない」っていう優しさもどこかにあったような気がする。

だからなのか、状況自体はそこそこシリアスなのに背景はやっぱり明るいし、映像自体も徹底してPOPだし、何より彼女たちからエネルギーが尽きることが最後までなかったんですね。

ラストの展開で「戒め」のようなオチもあるのかな・・・なんて思ったけど、結果的にはこのオチで良かったと思う。

最後の最後まで彼女たちらしくスルスルッと切り抜けて、ケラケラと笑いながら生きていく。
不思議とそこに「嫌味」を感じなかった。


店長の元に言い訳を言いに行ったあの日。
友人のドラッグパーティーで知らずにむしゃむしゃと大麻入りのクッキーを食べてしまった二人。
何とか「シラフ」で店長に謝りたいと必死に吐き出そうとするも、結局手遅れでハイになってしまう。

「最近は仕事だって頑張っていたし、ドラッグだって終業後にやってたんだろ?だから今回も許そうと思っていたんだ。でもさすがに本社にバレたら俺もクビになってしまう。だから残念だが君たちはクビだ。いいかい、私のような生き方をするなよ。人生を楽しむんだ。」

店長は二人の事が好きだった。
お調子者でドラッグをやっていることも知っていたけど、それでもいつも明るく仕事も真面目にやってくれていると認めていた。

だからこそ、厳しく接したんだと思う。
この店長の気持ちがそのままこの映画における彼女たちの立ち位置だったような気がした。

とにかくお下品ではあるんだけど、やっぱり憎めないジェシーとアンジェラ。
なんか好きだな~。



あと、やっぱりダスティンは厚切りジェイソンにそっくりなんだよな~
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