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ちいさな独裁者のりのレビュー・感想・評価

ちいさな独裁者(2017年製作の映画)
4.1
【感想】
権威と権力を目一杯に描写した良作。軍服に宿っている権威を利用し、これでもかと権力を行使する。権力とは、すなわち「相手の抵抗を排してまでも、自己の意思の貫徹すること」である。軽微なものでは荷物を持たせる、敬服させる。重いものでは虐殺や処刑の指示などがある。
ヘロルドは常軌を逸した虚言を吐きまくるのだが、毅然とした態度かつ終始一貫した論理性を発揮している。だから、軍服の権威と相まって、「本物の」大尉になっている。ここで考えさせられるのは、「本物」と「偽物」の差異についてである。
我々は何をもって両者を区分できるのか。見ず知らずの人の権威をどのように受容するのだろうか。本作では「軍服」がそれを担保していた。厳密に言えば、大尉の軍服を着ていることが、権力を振ることを正当化してくれる。つまり、権威を付与するシステムが作動しているから、軍服に権威が宿るのである。

【要約】
脱走兵ヘロルドは廃棄されていた車内から大尉の軍服を盗んだ。権威を身に纏い、様々な暴挙にでる。
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