このレビューはネタバレを含みます
ゲロがミステリーを加速させ、解決法として機能するという斬新な推理もの。探偵ものや推理ものが嫌いな私でも楽しめた快作。
「スターウォーズ 最後のジェダイ」をトリッキーに作りすぎて世界的批判を浴びたライアン・ジョンソン監督の起死回生の作品でもある。
彼の本領でもあるベタベタな展開を徹底的に裏切っていくという演出が見事に活かされてる。
新たな傑作探偵ものとか、散々誉められてるのでプロットよりもライアン監督の心情を考えると、より面白い側面が見えてくる。
凄い富豪にシンデレラ張りに選ばれたら周囲から散々罵倒されるヒロインは、当時の監督の状況をそのまま体現しているのだろう。その中でも政治的に偏った人間に最後のジェダイは利用され、酷い状況になったことがニュースにもなった。
そこら辺のアメリカのネット社会と政治的背景を南米からやってきた女の子に負わすことで、ライアンなりの宣戦布告にも見える。
ラストの2階から見下ろす構図は、アメリカの不寛容を嘲笑うだけでなく、何だかスターウォーズのレイも思い出した。
善悪の狭間で揺れながら最終的にライトサイドに向かうのは「ルーパー」も同じ。お祖父ちゃんに愛憎を振り撒くクリスエヴァンスもカイロ・レンに見えてくるし、色々とライアン・ジョンソンが本当にやりたかったことが垣間見えたような気がする一品。
もちろん、新たなる探偵ものの誕生であり、ダニエル・クレイグの007後の食い扶持でもあり、新ボンドガールのお披露目でもある。
色んなハリウッドの思惑も組み合わせって、本当に色んなメタ的な楽しみ方もできたミステリーでした。