このレビューはネタバレを含みます
フランス語の名前を持ち南部訛りのアメリカ語を喋る英国風の探偵。テンコ盛りの属性はポアロを思わせるが、彼には口髭がない。彼は決して強烈なキャラクターを持った探偵ではない。むしろ丁寧にアイデンティティを殺す事でブノワ・ブランは異物な傍観者となり、何者でもなくなる。彼はこの事件に対していわゆる探偵役ですらない。それは政治的な問題を露骨に絡めたストーリーと無関係では無いだろう。この問題をこの結末で解決するのは「何者か」であってはいけなかったのだ。
アメリカらしさを薄めた舞台や推理物らしい劇伴がラストのカントリーミュージックを際立たせている。