豚肉丸

象は静かに座っているの豚肉丸のレビュー・感想・評価

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.6
人生に行き詰った4人が「静かに佇んでいる象」を見に行くお話

4時間の長尺映画ではあるが体感は2時間ぐらい。タル・ベーラのような長回しで登場人物の後ろ姿を追うショットは心地良かったが、その他にも登場人物の視線を表したような長回しのショットなど、かなり良いショットが多かった。

映画は全編に渡って死の匂いに満ちている。人生の行き詰まり、閉塞感、それらの行き詰まりをより加速させる死と、それらの行き詰まりから解放されるための死。思春期に覚える閉塞感、大人になって思う人生の行き詰まり、老人になり社会からも家族からも拒絶される人生。それぞれの世代での人生の行き詰まりが明確に表され、そしてそれらから逃げるように主要人物は「動かずにただ突っ立っている象」へと向かっていく構成が面白かった。

最終的に登場人物の目的は「象を見に行く」ことに収束するが、それまでは4人の人生が長い時間を使って描かれる。そこには結局物語の本筋に絡んでこない部分も多いのだが、これもまた人生を追体験しているようで面白い。「象を見に行く」ことが主題の映画としては不要な部分も多いのだが、人生を追体験する映画だと捉えたら不要だとは言いきれない。長尺映画だからこそできる体験なのか。

途中の象の宣伝看板や「象」というアイテムの設定など、かなりタル・ベーラの『ヴェルクマイスター・ハーモニー』を感じた。この映画は大きな鯨の模型に魅了され狂ってしまうお話だった一方で、本作は何もかも狂ってしまった人達が象を見ることで希望を取り戻そうとする対比的な構図になっているのが面白い。
かなりタル・ベーラ的でありながらもタル・ベーラの手法とは少し異なる。なんと言うか、非常に現代的な長回し映画で凄く良かった!!けど非常に気分が重たい...
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